新型コロナウイルスの感染が拡大する東京で、爆発的な患者急増(オーバーシュート)を防ぐために週末の不要不急の外出自粛が要請され、平日もできる限りの在宅勤務と夜間の外出自粛の要請が継続していますが、日本国内では「不要不急の外出」って何?と言う声があるようです。イベントの中止や花見の自粛、夜の盛り場への外出自粛などを求めていますが、その定義が曖昧で戸惑いを感じる人も多いようですが、参考までにここロサンゼルス(LA)で発令された自宅待機命令を基に、不要不急とはどのような定義なのかを紹介します。

ショッピングモールも閉鎖の対象
ショッピングモールも閉鎖の対象

カリフォルニア州全域で19日に発令された「Stay at home order」は、日本語にすると自宅待機命令になります。同日、ロサンゼルス郡で発令されたのも「Safer at home」という「自宅でより安全に」という名の自宅待機命令です。どちらも「自宅待機命令」ですが、その内容は不要不急の外出を控えることが基本です。自宅待機命令なので、外出そのものを禁じているわけではありませんが、カリフォルニア州ではこの不要不急の外出関しては明確な行動制限が定義されています。

●認められる外出

・食料品、医薬品、日用品など生活必需品の買い物

・病院や薬局に行くこと

・健康維持のために屋外での散歩や自然の中での運動、犬の散歩(ただし他の人から6フィート(約1.8m)の距離を保つこと)

・認められているビジネスに関わる人の通勤

・レストランやカフェでのテイクアウトとドライブスルー利用

・ガソリンスタンドの利用

・子供の保育園への送迎

・郵便局の利用、クリーニング店やコインランドリーの利用、動物病院の受診など

●不要不急と見なされるもの

・レストラン、カフェ、バーでの飲食(店内での飲食は禁止ですが、テイクアウトはOK)

・フィットネスジムの利用やヨガクラスなどへの参加

・ビジネス、プライベートを問わず10人以上で集まること

・高齢者や障害者施設の訪問や病院への見舞い

・緊急の用事がなく同居していない家族や友人と会うこと

・映画館やゲームセンター、カラオケなど全ての娯楽施設の利用

・生活必需品以外の買い物

・コンサートやスポーツの試合、大型イベントの参加や開催はもちろん、結婚披露宴や誕生日会など個人レベルのイベントや集まり

屋外であろうと室内であろうと他の人と6フィート(約1.8m)離れることが求められています
屋外であろうと室内であろうと他の人と6フィート(約1.8m)離れることが求められています
スーパーマーケットのレジの列には立ち位置がマークされています
スーパーマーケットのレジの列には立ち位置がマークされています

不要不急の外出自粛の要請と同時に、これら不要不急と見なされるビジネスは休業や閉鎖を要請されています。こちらは要請とは言っていますが、違反すると罰金を科せられることもあり、最悪は水道や電気のシャットダウン措置まで行う権限が自治体にはあります。自宅待機命令以降、メディアでは「エッセンシャル・ビジネス」と言う言葉を頻繁に耳にするようになりましたが、必要不可欠な事業は何かを具体的に紹介しています。生活に直接支障をきたさないノンエッセンシャル・ビジネスと言われる事業も明確に定義されており、線引きがされているのであまり一般の人に混乱は生じていないのがこちらの状況です。

●必要不可欠なビジネスとは

・スーパーマーケットや大型小売店、コンビニエンスストアー、リカーショップなど食料品や日用品を扱うお店

・薬局、ドラッグストアー

・医療機関

・銀行、郵便局、宅配サービス

・動物病院やペットショップ

・保育園

・ガソリンスタンド、自動車修理工場

・屋外で開催されるファーマーズマーケット

・政府機関やメディア、保険会社、公共交通機関、タクシーなど

・金物や電気製品等を販売する店舗や工事業者

●必要不可欠と見なされないビジネス

・映画館や美術館、博物館、劇場、遊園地など娯楽施設全般

・ジムやリクリエーション施設

・カジノ、競馬

・ショッピングモール

・スポーツ施設やコンサート会場、イベントホール、ライブハウス

・衣料品や貴金属、化粧品など生活に直接支障をきたさない店舗

・ネイルサロンやヘアサロン、床屋、マッサージ、美容整形など

・図書館

普段は混雑するLAの街中もご覧のように車もほとんど走っていません
普段は混雑するLAの街中もご覧のように車もほとんど走っていません
レストランやカフェはテイクアウトのみ営業が認められ、電話やオンラインで注文ができます
レストランやカフェはテイクアウトのみ営業が認められ、電話やオンラインで注文ができます

学校は全校休校で、大学もオンライン授業に切り換えられています。また、在宅勤務が可能なビジネスは在宅でのリモートワークが求められ、買い物や野外での散歩、運動をする際にはソーシャルディスタンシングと呼ばれる他の人と1.8mの距離を保って行動することが呼び掛けられています。散歩中も人とすれ違う時は互いに道路の端によって距離を保ち、ファーマーズマーケットや食料品店でも一度に入店できる人数を制限し、入店時やレジでは前の人と間隔をあけて並ぶことが徹底されています。これらの措置は当然ながら経済活動を停滞させ、経営の危機に直面する企業や個人事業主、失業者が増えるなど大きな痛みを伴いますが、ニューヨーク州のクオモ知事は経済活動の早期再開を示唆したトランプ大統領に対し、「人の命を犠牲にして経済を加速しろという国民はいない」と非難。今は何よりも新型コロナウイルス感染拡大によって失う命を減らすことに全力が注がれています。カリフォルニア州もこのまま感染拡大が続くと州内の人口の半分以上が感染する可能性があると具体的なデーターを示し、知事や市長は連日記者会見を行って自らの言葉で現状や新たな対策を説明。数万人の命が失われる事態を避けるための自宅待機命令であることへの理解を求めています。一方、外出できない高齢者や失業者、学校給食がなくなって貧困に直面する子供などに食料品の無料支給を行ったり、飲食店を支援するためにテイクアウト利用やギフトカード購入を呼び掛けるなど支援の輪も広まっています。

営業している店舗でも、「具合が悪い人やせきをしている人は入店お断り」の看板を出しているところも
営業している店舗でも、「具合が悪い人やせきをしている人は入店お断り」の看板を出しているところも
サンタモニカ市では街中には「冷静に行動し、情報を取集し、健康でいるように」との注意喚起の電光掲示板も
サンタモニカ市では街中には「冷静に行動し、情報を取集し、健康でいるように」との注意喚起の電光掲示板も

欧米では高齢者だけでなく、10代や20代の若者も感染して重篤化したり亡くなるケースも出ており、他人事ではなく、誰もが感染する可能性があることを認識して一人ひとりが危機感を持って行動することが求められています。