経済再開を急ぎすぎたカリフォルニア州では7月に入って新型コロナウイルスの感染者数が急増したことを受けて7月中旬に再びバーの閉鎖や飲食店の屋内営業を禁止することを発表しましたが、それから1カ月半が経った今、「Al Fresco(アルフレスコ)」と呼ばれる屋外ダイニングが新たなトレンドとなっています。

車道の一部を完全に封鎖してアルフレスコとして週末は周辺の飲食店に開放している場所も
車道の一部を完全に封鎖してアルフレスコとして週末は周辺の飲食店に開放している場所も
車道の一部にバリケードを設置してパラソルとテーブル、椅子を設置したアルフレスコ
車道の一部にバリケードを設置してパラソルとテーブル、椅子を設置したアルフレスコ

アルフレスコはイタリア語で「屋外」を意味し、文字通りコロナ禍で屋内営業ができなくなった飲食店が店の駐車場や周辺の道路の一部を利用して屋外営業する新たな形態のことを指しています。ロサンゼルス(LA)では新型コロナウイルス感染拡大の影響による特例として市が歩道や車道の一部など公共スペースを営業スペースとして利用することを認めたことを受け、今では街中のあちらこちらにアルフレスコが出現しています。中には週末や時間限定で一部道路を閉鎖して複数の飲食店が合同で利用するビアガーデンのような巨大な飲食スペースが誕生している場所もあります。

一般車の侵入は禁止し、バスや緊急車両のみ通過を許可している場所も
一般車の侵入は禁止し、バスや緊急車両のみ通過を許可している場所も

ほとんど雨が降らないLAでは、もともとパティオ席がある飲食店もありますが、今では高級レストランからカフェまで多くの飲食店が仮設の屋外飲食スペースを次々とオープンさせています。当初は8月末までの予定でしたが、感染拡大が収まる気配がないため年末まで延長されることが決まっています。

夏から秋にかけてほとんど雨が降らず、温暖な気候のLAではこの季節にピッタリなアイディアですが、これまでは公共スペースで禁止されていた飲酒もコロナ禍の特例で特別に許可されたこともあって感染のリスクを抑えながら飲食ができると評判も上々です。

さんさんと降り注ぐ陽光の下での食事は気持ちよく、パティオ席の食事はLAらしい雰囲気が感じられます
さんさんと降り注ぐ陽光の下での食事は気持ちよく、パティオ席の食事はLAらしい雰囲気が感じられます

韓国焼肉や寿司からフレンチのコースにステーキやシーフードまでLAの人気レストランの料理を屋外で楽しめるとあり、ウィズコロナ時代のニューノーマルとしてすっかりなじみの光景になりつつあります。一部飲食店ではパンデミック前とほぼ同水準にまで売り上げが回復しているとも言われ、飲食業界にも少しずつ活気が戻ってきているようです。

アルフレスコがLAの新たなトレンドとなる一方、まだ多くの人が飲食店に出かけることに不安を感じているのも事実。そのため、今では多くの店が「To Go(お持ち帰り)」「デリバリー」「パティオ(屋外)」の3つを組み合わせた営業形態を取っています。

歩道を利用したおしゃれなアルフレスコもあります
歩道を利用したおしゃれなアルフレスコもあります
駐車場に設置されたアルフレスコ
駐車場に設置されたアルフレスコ

レストラン・ビジネス・ニュースによるとおよそ1200人を対象に行った調査の結果、約4分の1の人は「ワクチンができるまでは外食を控えてデリバリーまたはテイクアウトのみを利用する」と考えており、約3分の1が隣のテーブルとの間に充分なソーシャルディスタンスがあることや、座席の間に感染防止のパーティションがある店舗など安全対策が万全の店のみ利用したいと考えているといいます。一方で、38%の人が今後3か月以内に外食をしたいと回答しており、その多くが屋外ならOKとアルフレスコを支持しているそうです。

LAタイムズ紙によるとLAのおよそ1300軒のレストランがアルフレスコの営業許可を取得しているそうですが、その多くが駐車場や道路の一部にバリケードを設置してテーブルや椅子を並べているだけなのでおしゃれ感はゼロ。

車内から見た風景はこんな感じ。アルフレスコのすぐ横を車が走行しているのが分かります
車内から見た風景はこんな感じ。アルフレスコのすぐ横を車が走行しているのが分かります

また、コロナ禍前よりも交通量が少ないとは言え、テーブルのすぐ脇を車が走行しているため、排気ガスや騒音なども気になるところです。それでも経済再開に慎重なLAでは、ウィズコロナの新たな日常としてアルフレスコは受け入れられているようです。(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」、写真も)