新型コロナウイルスの感染拡大が始まった昨年3月にここロサンゼルス(LA)で自宅待機命令が出され、ロックダウンが始まって19日で1年がたちました。当時は、「ステイホーム」や「ソーシャルディスタンス」など聞きなれない言葉に戸惑い、スーパーマーケットからあらゆる食料品や日用品が消えるパニックに驚き、感染への恐怖から誰もが他人を避けるような生活が始まり、増え続ける感染者のニュースと人が消えた街に恐怖する日々でしたが、まさかコロナとの戦いがこんなにも長期戦になろうとは想像もしていませんでした。早期にロックダウンしたLAでは初期の段階では感染爆発をある程度抑えこんでいたものの、秋から冬にかけては感染者数が激増。集中治療室(ICU)の空き病床がゼロになるなど医療体制が逼迫する厳しい状況にも直面しました。住民の3人に1人が感染している可能性が指摘された今年1月中旬の最悪だった頃に比べると状況は劇的に好転し、ワクチン接種も進んでいることなどから、春の到来と共にようやくロックダウンが始まって以降はじめて映画館や飲食店での店内飲食も再開しています。

買い物客で賑わうビバリーヒルズのロデオドライブ
買い物客で賑わうビバリーヒルズのロデオドライブ

1年前は、飲食店はテイクアウトとデリバリー限定で、必要不可欠な食料品や日用品、医薬品を扱う店舗以外はすべて営業が禁止され、娯楽施設のみならずビーチやハイキングコースまでもが混雑防止のために一時閉鎖されていたほど厳しい感染予防対策が取られていましたが、現在は学校の対面授業も再開されるなど明るいニュースもあり、コロナ禍前の「日常」を取り戻しつつあります。しかし、完全に行動制限が解除されたわけではなく、いぜんコロナとの戦いが続いているLAのロックダウンから1年たった現状をレポートします。

渋滞が復活したLA
渋滞が復活したLA

映画館は25%のキャパで営業が可能に

1年間に渡って閉鎖されていた映画館は、15日から収容人数を25%以下、または1スクリーンあたり最大100人までに上限を定めて営業を再開しています。しかし、多くの新作映画が公開を延期しているため、目玉となる作品がないこともあり、現時点で営業を再開している映画館は一部で、スターの足形と手形で人気のグローマンズ・チャイニーズ・シアターや人気ショッピングセンター、ザ・グローブ内にあるパシフィック・シアター、映画ファンに定評のあるアークライト・シネマなどは現時点でまだ閉まったままです。ちなみに、ロックダウンに伴って閉鎖されていたチャイニーズ・シアターの手形や足形は、コロナ禍以前は無料で自由に見学ができましたが、現在は5ドルの入場料を支払って入場するシステムになっています。

入場料を支払い、見学できるようになったチャイニーズ・シアターの手形と足形
入場料を支払い、見学できるようになったチャイニーズ・シアターの手形と足形
いぜん閉鎖されたままの映画館も
いぜん閉鎖されたままの映画館も

テーマパークは4月1日から再開が可能に

LA近郊のテーマパークはすべて昨年3月中旬から閉鎖されていましたが、今月に入ってディズニーランドやユニバーサル・スタジオ・ハリウッドではアトラクションは閉鎖されているものの園内で飲食が楽しめる特別イベントをチケット制で開催し、コロナ禍以降初めて園内に人を入れて一部施設の営業を再開させています。ディズニーランドは収容人数を15%に制限して4月30日に営業を再開することを発表していますが、当面は入場できるのはカリフォルニア州の在住者のみで事前にオンラインで入場チケットを購入することや1つのグループは最高10人までとすること、マスク着用などが条件となっています。また、感染予防のためパレードも行わない方針です。一方、マジック・マウンテンは4月1日から営業を再開することが発表されていますが、ユニバーサル・スタジオの営業再開は未定で、スヌーピーで知られるナッツベリーファームも5月の営業再開を目指すとのみ発表されており、テーマパークの完全再開にはまだ時間がかかりそうです。

観光客の姿が戻ってきたハリウッド
観光客の姿が戻ってきたハリウッド

一部美術館や博物館は4月1日からオープン

ロサンゼルス自然史博物館や西海岸最大の美術館ロサンゼルス・カウンティ美術館(LACMA)は、4月1日におよそ1年ぶりに営業を再開することを発表しており、スペースシャトル「エンデバー」の展示で人気のカリフォルニア・サイエンス・センターは今月27日からオープン予定です。一方、日系人の歴史を展示する全米日系人博物館やJ・ポール・ゲッティ美術館(ゲッティセンター)などは現時点では営業再開は未定となっています。


大リーグは観客を入れて開幕戦

昨季は年間を通じて無観客試合だったドジャースとエンゼルスは、来月のホーム開幕戦は観客をスタジアムに入れて開催できることが発表されています。両チーム共に収容人数の20%まで観客を入れることが認められており、マスク着用など感染予防を行った上でスタジアムでの試合観戦が可能になります。ドジャースは1万1200人、エンゼルスは9000人ほどのファンが入場できることになります。一方、屋内でのプロスポーツ観戦はまだ認められておらず、NBAやNHLは無観客で試合が行われています。

レイカーズの本拠地ステープルズセンターは閉鎖されたまま
レイカーズの本拠地ステープルズセンターは閉鎖されたまま

飲食店は1年ぶりに店内での飲食が可能に

LAではコロナ禍以降、1年間に渡って店内での飲食は認められていませんでしたが、感染者数の減少とワクチン接種の普及に伴って今月15日から収容人数を最大25%に制限して店内飲食の再開が認められています。これまでは屋外に設置されたテーブルやパティオ席でのみ営業が可能でしたが、現在は屋外席のない店舗も営業が可能となっています。ただし、ワイナリーやブリュワリーは屋外での営業が許可されたものの店内でお酒を楽しむことはいぜん禁止されています。また、これまで閉鎖されていたショッピングモールのフードコートは、1年ぶりに最大収容人数を25%以下に制限して営業が可能となっています。

ソーシャルディスタンスを保って営業を再開するフードコート
ソーシャルディスタンスを保って営業を再開するフードコート
車道の一部をつぶして屋外飲食スペースとする特別措置は継続中
車道の一部をつぶして屋外飲食スペースとする特別措置は継続中

旅行はいぜん自粛

アメリカでは多くの大学が春休みになる時期であるため空港の混雑がニュースになっていますが、ロサンゼルス空港(LAX)にカリフォルニア州外から到着するすべての人は、オンラインフォームの提出と10日間の自主隔離が求められています。また、カリフォルニア州では住民に対していぜん不要不急の旅行や移動はせず、レジャーなどで自宅から120マイル(約193キロ)を超える移動をしないよう求めていますが、感染者数の減少や春休みに伴って要請を無視して旅行に出かける人が増えていると伝えられています。

ウエルカムバックの文字が掲げられたサンタモニカの観光名所プロムナード
ウエルカムバックの文字が掲げられたサンタモニカの観光名所プロムナード

(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」、写真も)