ここロサンゼルス(LA)では、新型コロナウイルス感染拡大の影響で昨シーズンは全試合無観客試合だった大リーグですが、今季は感染状況が改善されたことから有観客で開幕戦を迎えることができました。大谷翔平選手が所属するエンゼルスは、33%の観客動員が認められ、1試合で約1万5000人のファンがスタジアムで観戦することができます。もちろん様々な規制があり、コロナ禍前と同じように観戦することはできませんが、丸1年球場にファンが入れなかったことを考えると感慨深いものがあります。

リアル二刀流として出場を果たした4日のシカゴ・ホワイトソックス戦に続いて今季2度目の先発が決まった大谷選手を応援するため、20日のテキサス・レンジャース戦の観戦に出かけてみました。球場を訪れるのは2019年夏以来およそ2年ぶりで、コロナ禍では初ということで、ウィズコロナ時代の大リーグ観戦はどのようになっているのかレポートします。

大谷選手を応援する現地在住日本人の姿も
大谷選手を応援する現地在住日本人の姿も

感染予防のためチケット売り場は閉鎖されており、接触を減らすために紙のチケットも撤廃され、入場するにはオンラインで購入したデジタルチケットが必要です。以前はオンラインで購入後にチケットをプリントアウトして入場することができましたが、コロナ禍でそれも禁止に。スマホに専用アプリをダウンロードし、そこに購入したデジタルチケットが保存されるシステムになっています。複数枚購入して同行者と別々に入場する場合は、アプリ上で購入したチケットを相手に転送する必要があり、機械の操作に不慣れな人は手間に感じそうです。

入場時はスマホのアプリに表示されるバーコードを読み取ってもらいます
入場時はスマホのアプリに表示されるバーコードを読み取ってもらいます

チケットはグループでまとめて購入する必要があり、購入は2枚以上からとなります。2~6枚の間で希望枚数と購入可能なセクションを選ぶと、自動的に座席が割り当てられるシステムになっています。以前は座席表から好きな席を選択できましたが、コロナ禍で座席を指定することはできません。購入時はすでに2枚席は完売で、4枚以上からしか買えなくなっており、希望枚数を確保するには観戦が決まったら早めにチケットを購入することが必須のようです。

ソーシャルディスタンスを保つため、間隔を空けて座らせる対策が
ソーシャルディスタンスを保つため、間隔を空けて座らせる対策が

車社会のLAでは試合開始前はいつも駐車場の手前から球場に入る車で渋滞していましたが、この日は待つことなくスムーズに球場内に入ることができました。駐車場代も事前にオンラインで支払えば、アプリに駐車券が保存されるので、スマホに表示したバーコードを読み取ってもらうだけで簡単に入ることができます。普段なら何千台もの車が並ぶ駐車場はガラガラで、試合開始直前にも関わらず入口までさほど遠くない場所に駐車ができ、「こんな光景見たことない」とちょっとした感動を覚えました。

駐車場もガラガラ
駐車場もガラガラ

先週ようやく有観客試合が再開されたNBAレイカーズとクリッパーズの本拠地ステープルズ・センターでは、入場するにはワクチン接種証明書か陰性証明書のいずれかの提示が必要ですが、エンゼルス・スタジアムでは証明書類の提示は不要。さらに、入場時の検温もありませんでした。ただし、コロナ対策から持ち込みの手荷物には制限があり、バックパックなど大きな荷物だけでなく、ハンドバックも持ち込めません。財布や携帯、鍵など基本的にポケットに入るもの以外は、4.5インチ×6.5インチ(約11.4センチ×約16.5センチ)以下のクラッチバッグか中身が見える透明のビニールバッグまたはプラスチックバッグのみ持ち込みが可能。防寒対策のコートや毛布、カメラなどは単体でセキュリティーを通る際に係員に見せて頭上に掲げて金属探知機をくぐれば持ち込めます。

セキュリティーも非接触で行われるため、手荷物の持ち込みも制限されています
セキュリティーも非接触で行われるため、手荷物の持ち込みも制限されています

2歳以下の乳幼児を除いて入場するにはマスク着用が必須で、基本的に飲食時以外は観戦中もマスクを着用し、鼻と口元を覆っておかなければなりません。球場内では6フィート(約182センチ)のソーシャルディスタンスを保つことなど基本的な感染予防対策はスーパーマーケットなどと同じで、売店やショップの前には立ち位置の印が床にマークされています。また、あちらこちらに消毒液スタンドも設置されており、エスカレーターの乗り口には係員がいて前の人と間隔を空けるようソーシャルディスタンスを促しています。

球場内では様々な感染予防対策が求められています
球場内では様々な感染予防対策が求められています
売店の前の床にはソーシャルディスタンスを保つためのマークが
売店の前の床にはソーシャルディスタンスを保つためのマークが

座席は購入時のグループごとにまとまりになっていて、両隣や前後は空席になるよう配置されており、空席の座席はすべてジップタイで固定されていて座ることができなくなっています。自分の周囲だけみると、間隔を空けながらもそこそこ人が入っているように感じたもののスタジアム全体を見渡すとかなり空席が目立ち、3分の1の観客ってこんな感じなんだとちょっと寂しい気分になりました。

座れないよう空席はすべてジップタイで固定されています
座れないよう空席はすべてジップタイで固定されています
33%の動員数に制限されているため、空席が目立ちます
33%の動員数に制限されているため、空席が目立ちます

ステープルズ・センターでは感染予防のために座席での飲食や売店での対面販売は禁止で、アプリで購入後に指定された飲食スペースを利用する必要があるようですが、エンゼルス・スタジアムでは売店に並んで直接注文が可能です。ただし、支払いは現金不可で、クレジットカード払いのみ。また、アプリからオーダーして、座席までデリバリーしてもらうこともできます。ホットドッグやピザ、ナチョスなどのほか、ビールなどアルコールも注文できます。しかし、野球観戦にはつきものだった名物のピーナツ売りはいなく、ピーナツを器用に座席まで投げてくれるあのおなじみの光景を見ることはできませんでした。

一方で、NBAのように飛沫防止から大声を出しての観戦は禁止かと思いきや、こちらは特に規制はない模様。ホームランが出れば大歓声が沸き起こり、満塁になれば誰もがコロナ禍前と同じように大声で叫んで盛り上がり、もちろんブーイングも起きます。しかし、全員がマスクをしているかというと実際には飲食のために外している人も多く、屋外といえども少しドキドキしてしまいました。そして、7回表が終了するとスタンドにいる観客が一斉に立ち上がってストレッチしながら「Take Me Out To The Ball Game(私を野球に連れて行って)」を大合唱する伝統も健在。「私を野球に連れて行って」と歌いながら、この時だけはコロナ禍前に時間が巻き戻ったかのような錯覚を覚えました。順調にいけば、カリフォルニアは6月15日にコロナに関するすべての規制が解除される見通しなので、こんな非日常の野球観戦が体験できるのも今だけかもしれません。

点が入ればコロナ禍前と同じように大歓声で盛り上がります
点が入ればコロナ禍前と同じように大歓声で盛り上がります

(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」、写真も)