7月23日に開幕した東京オリンピック(五輪)もいよいよ終盤となり、取材のために来日している海外記者たちも2週間の隔離を終えて東京の街に繰り出し、様々な日本の文化や食をレポートし始めています。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、過去の五輪のように自由に動き回って取材活動はできないものの、日本の魅力や異文化体験を海外記者ならではの視点で発信しています。日本で生まれ育った私たち日本人には当たり前の光景も海外から来た人たちには新鮮に感じることが多いようです。海外記者たちが見て感じた日本の魅力を紹介します。

●「コンビニは東京五輪の予想外のチャンピオン」とコンビニエンスストアを絶賛

新型コロナの水際対策で外食などが自由にできない記者たちは、ホテルに併設するコンビニを頻繁に利用していますが、弁当から日用品、飲料水にお菓子までなんでも揃う日本のコンビニにハマる記者が続出。特にアメリカやカナダの記者たちは自国のコンビニと比較し、「次元が違う。まったく別物」と大絶賛しており、多くの海外記者がSNSでコンビニ愛を投稿しています。深夜に取材を終えてホテルに戻り、コンビニが営業していることに歓喜し、「コンビニがなかったらどうなっていたか」とツイートする記者やコンビニで購入したものを写真入りで投稿する記者たちも。

USAトゥデイ紙は「記者と一緒に体験する東京五輪の舞台裏」と題した記事でコンビニを取り上げており、日本のお菓子の品ぞろえとパッケージのデザインを絶賛。「甘いものかうま味のあるものだけでなく、塩辛いもの、漬物や砂糖を使ったもの、サクサクしたものからグミのような柔らかいものまで、ありとあらゆる食べ物があり、思いつく限りの物が日本のコンビニでは見つけることができる」と伝えています。また、アメリカでの放映権を持つNBCテレビでも、日本人はコンビニでご飯を買うことが珍しくない(アメリカのコンビニではサンドイッチやサラダ、ホットドッグくらいしか売られていない)と紹介し、購入した弁当は電子レンジで温めてくれることや突然雨が降ってもレインコートや傘がおいてあるから安心などと紹介。

「東京のコンビニは予想外のチャンピオン」と報じるTime Out誌の電子版の記事
「東京のコンビニは予想外のチャンピオン」と報じるTime Out誌の電子版の記事

●日本のトイレの機能に驚き

USAトゥデイの同記事では、日本のトイレの機能も大絶賛しています。日本では当たり前になっているウォシュレットもアメリカでは見かけることがほとんどなく、日本に到着してすぐ利用した空港のトイレでカルチャーショックを受ける記者も多いようです。同紙の記者は、「ボタン、スイッチ、サイン、レバーがたくさんあり、触るのが怖かった」と自身の日本でのトイレ初体験を告白。トイレに近づくと壁のスピーカーから流水の音がすると驚き、トイレから聞こえる不快な音を隠すための機能だと知らなかった記者は、「用が済んだから早く出ていけというサインかと思った」と記しています。また、別の記者もウォシュレットや便座の保温、音楽が流れること(音姫)などトイレの機能を絶賛しています。

日本のトイレ事情を伝えるUSAトゥデイ紙の記事
日本のトイレ事情を伝えるUSAトゥデイ紙の記事

●回転すしは安くておいしいと大満足

日本に来たからには本場の「スシ」が食べたい!と思う人は多いようで、隔離が終わって楽しみにしていたスシに舌鼓を打つ様子が伝えられています。中でも日本ならではの回転寿司は人気で、各局のレポーターたちが回転寿司を体験し、食レポをしています。NBCのレポーターは、「アメリカで食べると高い寿司も、回転寿司なら700円でお腹がいっぱいになっておいしい」とレポート。また、ロサンゼルスのローカル局のレポーターは「これ最高!」と目の前に電車で運ばれる寿司に大喜びしながらレポートし、日本人は箸を使わず手でつまんで食べると伝えています。

回転寿司を特集するNBCの記事
回転寿司を特集するNBCの記事

●渋谷のスクランブル交差点の人混みにびっくり

東京に住んでいる人ならごく当たり前に通り過ぎるであろう渋谷のスクランブル交差点も、海外の記者たちには衝撃すぎる光景のようです。わずか数分の間に3000人もの人が横断する「世界で最も混雑する交差点」と行きかう人々の映像を多くのテレビ局が紹介しています。ニューヨークのタイムズスクエアと比較する報道も多くみられますが、何よりも緊急事態宣言下であるはずの東京でこれだけの多くの人が普通に渋谷の街を歩いていることが「カオス」と映り、NBCテレビは「世界で最も忙しい交差点は人で溢れ、五輪によってコロナが拡大する懸念がゆっくりと現実になりつつある」と伝えています。

渋谷のスクランブル交差点の混雑ぶりを報じるNBCテレビ
渋谷のスクランブル交差点の混雑ぶりを報じるNBCテレビ

●食べられない食品サンプルは摩訶不思議な世界

日本ではおなじみの飲食店の前に並ぶ食品サンプルも、海外の記者はその精巧な作りに驚愕するようです。そもそも食品サンプルはアメリカにはない文化だけにプラスチックでできている食べ物に興味津々になる記者も多く、NBCテレビでは「食べられそうなプラスチックの食品」と特集しています。「食品サンプルと呼ばれる料理は、日本語が分からない人でも何が食べられるか店に入る前に確認できる」と紹介。さらに食品サンプル屋が並ぶかっぱ橋通りを取材し、単なるサンプルではなく、まるでアートのような美しさで、日本食だけでなく、ピザやビールなど色々なサンプルが売られていると絶賛しています。

食品サンプルを伝えるNBCのニュース
食品サンプルを伝えるNBCのニュース

●納豆

プレス向けに配布されている軽食のランチパックやコンビニのおにぎりにハマる記者が多い中、納豆にチャレンジする記者も。健康志向の高いアメリカ人の間では近年、キムチや味噌など発酵食品の人気が高まっていますが、独特の匂いやネバネバから「嫌いな日本食」にあげられることも多い納豆を実際に食レポした反応は日本人としてはとても面白く感じられるものでした。NBCの朝の情報番組「トゥデイ」では、パック入り納豆を開けてそのままタレもかけずにキャスターたちが一口パクりと食べて絶句。コメントもなく、何事もなかったように次に進行する様子に、「誰か食べ方教えてあげなかったの?」と一人で突込みする筆者でした。また、NBCのフロリダ放送局の記者はSNSで「大豆を発酵させたもので、日本人はごはんの上にのせたり、しょうゆや辛子を入れて食べる」と動画と共に紹介。「ちょっとネバネバしていて、少し臭くてファンキーなテイスト」とコメントしています。

納豆を紹介するNBCローカル局の記者のツイッター
納豆を紹介するNBCローカル局の記者のツイッター

(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」)