ブロードウェーと聞くとニューヨークを連想する方が多いと思いますが、ここロサンゼルス(LA)のダウンタウンにも歴史のある古い劇場が建ち並ぶ劇場街ブロードウェーがあります。1920年代から30年代にかけてアールデコ様式の美しい劇場や映画館が多く建てられ、当時はLAのエンターテインメントの中心地としてにぎわっていたそうです。

アップルストアとして生まれ変わったタワー・シアター
アップルストアとして生まれ変わったタワー・シアター
1927年に建てられた外観は修復されて当時のままの姿でよみがえりました
1927年に建てられた外観は修復されて当時のままの姿でよみがえりました

時代はちょうどチャーリー・チャプリンに代表されるサイレント映画の全盛期で、ブロードウェーの劇場ではサイレント映画が上映され、華やかな劇場には多くの観客が集っていたといわれています。そんなLAのブロードウェーは、30年代のアメリカ大恐慌を機に衰退し、時を同じくしてサイレント映画からトーキー映画へと移行したことなどから多くの劇場が閉館。かつてはきらびやかだった街はさびれていつしか人も寄り付かなくなり、汚くて危険な地域というイメージが定着するようになりました。2000年代に入るとそんな歴史ある地区を再生させようというプロジェクトがスタートし、2014年にはLAの歴史文化財にも指定されている1927年に建設されたユナイテッド・アーティスツ・シアターが、エース・ホテルとして生まれ変わるなど歴史ある街並みが再びにぎわいを取り戻しつつあります。

上層階のバルコニーから見た店内はまるで美術館のような雰囲気
上層階のバルコニーから見た店内はまるで美術館のような雰囲気
ステンドグラスの窓やシャンデリアなど細部に至るまでそのまま残されています
ステンドグラスの窓やシャンデリアなど細部に至るまでそのまま残されています

そんな中で、今年6月には同じく27年にオープンした歴史ある映画館「タワー・シアター」が、改築プロジェクトによってアップルストアとして生まれ変わりました。アメリカ合衆国国家歴史登録材に登録された6ブロックにわたって広がるブロードウェー地区には、12の映画館がありますが、タワー・シアターもその1つ。世界的に有名な建築家チャールズ・リー氏が手掛けたLA初のトーキー映画向けの劇場で、世界初のトーキー映画「ジャズ・シンガー」のプレミア上映会が行われた劇場としても知られています。しかし、1988年に閉館となって以降は劇場として使用されることはなく、同年にLA歴史文化財に登録されたことから建物だけはそのまま残されていました。

1階には最新モデルのアップル製品が展示されています
1階には最新モデルのアップル製品が展示されています
かつての客席もそのまま生かして待合スペースに
かつての客席もそのまま生かして待合スペースに

アップルはそんなタワー・シアターをLA市などと協力して修復するプロジェクトを立ち上げ、老朽化した外観をきれいに修復した上で耐震性も整え、当時と変わらない美しい劇場を再現。パリのオペラハウスを模して建設されたという内装もほぼそのまま維持しており、天井や装飾品に至るまで内部も隅々まで修復し、オリジナルのプロジェクションスクリーンがあった場所にはビデオウォールと地元の若いアーティストを支援する無料のセッションが行われるフォーラムが、そして1階の客席部分はショップスペースに生まれ変わりました。入り口を入ってすぐのロビーも当時のままで、パリの歌劇場オペラ・ガルニエに着想を得たコリント様式の大理石の柱とブロンズの手すりがある大きなアーチ型の階段も残されています。

アップル製品を購入する予定がない人も1度訪れてみる価値は十分あります
アップル製品を購入する予定がない人も1度訪れてみる価値は十分あります

また、バルコニーも修復され、上層階は製品のサポートやサービスを受けるためのジーニアスバーとなっており、客席も近代的に様変わりしてジーニアスバーの待ちスペースに変貌しています。芸術的なコリント式の柱やステンドグラスの窓、天井の壁画、美しい装飾は一見の価値があり、シンボルの時計塔や劇場のサイン、ロビーなど当時のきらびやかな雰囲気も随所に感じることができるので、アップル製品に興味がない人でも美術館を訪れたような気分で内部見学を楽しめます。周辺には他にも古い劇場を再利用した小売店もあり、100年前の繁栄を連想しながら散策するにも面白い場所になっています。

(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」、写真も)