アメリカでは24日から、新型コロナウイルスワクチンの3回目となるブースター接種がスタートしました。ブースター接種とは、ワクチンを2回接種した後に時間の経過と共に低下する免疫を高めるための追加接種で、今回緊急使用が承認されたのは、ファイザー製のワクチンを接種して半年以上が経過した65歳以上と、基礎疾患のある人などを対象としたものです。

これら重症化リスクの高い人に加え、医療従事者や介護施設の職員など感染リスクが高い18歳以上も対象で、ここロサンゼルス(LA)でもさっそく医療機関やドラッグストアでブースター接種が始まっています。報道によると、全米で接種対象となる65歳以上は約1300万人おり、初日からLAでも多くの高齢者が追加接種を行ったことが伝えられています。

バイデン大統領は当初、接種から半年が経過した18歳以上の全員を対象とする計画を発表していましたが、接種対象を巡っては専門家の間でも意見が分かれ、最終的に米食品医薬品局(FDA)や米疾病対策センター(CDC)の専門家らでつくる委員会で検討した結果、政府の計画とは異なる形で3回目の接種が開始される運びとなりました。

日本でもブースター接種に関する議論が始まっていますが、一歩先を行くアメリカからブースター接種に関する最新情報をお届けします。

ブースター接種が始まり、LAのドラッグストアの前にはワクチン打てますと書かれた看板がお目見え。QRコードで簡単に予約ができます
ブースター接種が始まり、LAのドラッグストアの前にはワクチン打てますと書かれた看板がお目見え。QRコードで簡単に予約ができます

Q.「ブースター接種」って何?

A.免疫を強化するために追加で3回目を接種することを意味し、これまでの2回のワクチンと同じワクチンが使われています。デルタ株など変異株の流行で予防効果が低下してブレイクスルー感染する可能性が出てきたことから、重症化リスクのある人や感染リスクの高い人を保護するために必要になったものです。モデルナ製も近い将来承認される見通しですが、現時点ではファイザー製のみ接種が可能です。ちなみに、「ブースター」とは英語で「押し上げる」「後押しする」という意味で、追加の接種で抗体価を押し上げるという意味でブースターという言葉が使われています。

Q.なぜ必要なの?

A.デルタ株に対して、2回の接種が完了してからおよそ半年ほどで予防効果が低下するというデータが出てきたことが理由です。ワクチン接種者は感染しても重症化や死亡率を抑える効果はなお高いとされていますが、高齢者や高血圧、糖尿病、腎臓や肺に疾患がある人、ガンや心臓病を患っている人は重症化しやすいことからCDCは接種を推奨しています。アメリカでは昨年12月から医療従事者や介護施設の入所者らハイリスクの人から順次ワクチンの接種が始まっており、こうした初期に接種した人たちが今回対象となっています。

Q.3回目の副反応は?

A.一般的に1回目より2回目の方が副反応が強く出るとされているため、3回目の副反応の強さが一番気になるところだと思いますが、ファイザー社によると全体的に2回目の時と大きな差はないとしています。FDAが発表したデータによると、接種部位や腕の痛み、倦怠感など、軽度から中等程度の副反応があることが報告されていますが、いずれも2回目と同程度で安全性に問題はないとしています。若い世代では発熱の頻度が若干高くなっているものの、頭痛や倦怠感は低いというデータもあるようです。

Q.いずれ全員に必要となるの?

A.世界保健機構(WHO)の専門家はブースター接種について、科学的データに基づいて「広く一般に行う必要はない」という姿勢を示しています。現時点では2回の接種で重症化を防ぐ効果は高く保たれているというのが見解で、3回目の接種よりも世界的なワクチン供給の不平等を解消することを優先すべきだと主張しています。また、CDCは免疫が低下した一部の人にはブースター接種を推薦するとしていますが、より多くのデータが示されるようになれば、今後数週間で対象が変更になる可能性もあるとしています。一方、大統領首席医療顧問で米国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長は、しかるべき時が来たら将来的に全員にブースターが必要になる可能性を指摘しています。

Q.ブースターの効果は?

A.ファイザー製のワクチンは接種完了から半年ほどで、65歳以上の人が重症化して入院することを防ぐ効果は85%から70%に低下するとのデータを発表されていますが、3回目を接種することによって中和抗体価が増加して重症化率を下げることが期待されています。すでにブースター接種を開始しているイスラエルの研究では、重症化する割合が11倍低下するという結果も発表されています。

(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」、写真も)