新型コロナウイルスの感染拡大から3年目の夏を迎えた今年は、世界各国で入国に際する水際対策や規制が緩和されていることなどから、今年の夏休みは海外旅行を計画している方も少なくないでしょう。日本国内では第7波による感染急拡大が起きているものの以前のような国としての行動規制は強いておらず、未だ世界から見ると厳しいとされる水際対策も以前に比べると大幅に緩和されたことも、海外旅行へのハードルを下げる要因となっています。

一方で、旅先でコロナ陽性が判明して予定通り帰国ができない人が続出していることも伝えられています。渡航先には検査なしでコロナ禍前と同じように簡単に入国ができても、日本への入国には国籍に関係なく全ての人に陰性証明が求められているため、帰国前検査で陽性が判明して飛行機に搭乗できない人が急増しているようです。海外ではマスクなしで観光が楽しめるなどコロナを忘れてバカンス気分を満喫できる一方、陰性証明書が取得できない限り帰国ができないリスクも念頭に置く必要があります。

筆者の周囲でもこの帰国前検査で陽性となり、帰国便に乗れなかったケースがちらほら出ており、まだまだ海外旅行のハードルは高いのが現状です。

では、もしも海外でコロナに感染したらどうなるのでしょう。ここアメリカでのケースを紹介します。

まずはじめに、日本帰国に際して帰国便が出発する72時間以内にPCR検査(または抗原定量検査)を受け、陰性証明書を取得する必要があります。例え無症状でも、陽性だった場合は出国することができません。仮に陽性反応が出ても時間的な余裕あれば、出発に間に合うよう再度検査を受けることはできますが、陰性証明書が取得できない限り帰国はあきらめなければなりません。現地滞在中にどんなに気をつけていても、誰でも感染するリスクがあると理解した上で、覚悟を決めて渡米することが必要です。

日本入国アプリMySOSで陰性証明を登録すると画面が緑色に変わります
日本入国アプリMySOSで陰性証明を登録すると画面が緑色に変わります

アメリカも日本同様に感染力が強いオミクロン株の系統の1つBA.5がまん延していますが、マスク着用を含め行動規制はなく、海外からの入国者にPCR検査による陰性証明も求めていません。ここロサンゼルス(LA)では、屋内や人の多い場所でマスクを着用している人を見かけることはありますが、すでに多くの人がコロナ感染を気にせず過ごしているため、飲食店や小売店では従業員がマスクをしていないことも多いですし、スポーツバーに行けば大声で盛り上がる人で混雑しており、コンサートや野球場など大規模なイベント会場でもマスクをしている人は少数派です。そんな中で過ごす以上、当然ながら感染のリスクは高まります。

日本入国には検査での陰性証明書の取得が必須です
日本入国には検査での陰性証明書の取得が必須です

ではもし仮に陽性となってしまったらどうなるのでしょう。米疾病予防管理センター(CDC)は、陽性診断後少なくとも5日間の隔離を求めています。6日目に症状がなければその後5日間はマスク着用の上で隔離は不要となりますが、仮にこの時点で症状があった場合はさらに5日間の隔離が必要としています。

この間、日本のような隔離施設はなく、基本的に無症状または軽症ならホテルの自室などで自己隔離することになります。すなわち、陽性が分かった時点で、飛行機の予約を一旦キャンセルし、新たに隔離するためのホテルの部屋を確保する必要があります。宿泊費は当然ながら自己負担となり、飛行機会社や予約時の条件によってはキャンセル料や予約変更手数料などが発生する可能性もあります。

また、検査で陰性とならない限りは出国できないため、何泊必要となるのかなど今後の予定を立てることもできません。無症状なら最短で6日目に再びPCR検査を受けて陰性なら帰国することができますが、症状があったり、陽性が続く場合はさらに滞在期間が延びることになります。陰性が確認された直後に再び陽性となる「リバウンド」が増えている他、陰性になるまで3週間程度かかる人も多いと言われており、滞在が長期化する可能性もあります。

ドラッグストアなどで販売されている簡易検査キットを事前に準備しておくといざという時に便利です
ドラッグストアなどで販売されている簡易検査キットを事前に準備しておくといざという時に便利です

自己隔離中は、日本のように食料品や日用品の支援もありませんので、ウーバーイーツなどを利用して自身で食料品など必要な物を調達する必要があるだけでなく、症状が悪化した場合は自ら病院を探して連絡しなくてはならず、現地に知り合いでもいない限り負担が大きく、言葉の問題などからも相当ハードルが高いことが分かります。

世界の多くの国がすでに撤廃している陰性証明書の提示を求めていることが厳しすぎるという意見もありますが、日本の水際対策に関する是非はともかく、日本と海外の往来はまだまだハイリスクであることだけは間違いありません。(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」、写真も)