日本酒は「SAKE(サキ)」としてアメリカですっかり市民権を得ていますが、「Shochu(焼酎)」となるとまだまだ発音やスペルが似ている韓国のSoju(ソジュ)と混同する人が多いのが現状。日系人やアジア人が多いここロサンゼルス(LA)ですら、焼酎を取り扱っているのは日本食レストランや日系のスーパーが主で、一般のリカーショップやスーパーで焼酎を見かけることはほとんどありません。一方で最近になってようやく、日本の本格焼酎がじわじわと浸透しはじめ、少しずつですが知名度が上がっているという話もちらほら聞こえるようになりました。

斬新な見た目で人気だったメロンを使ったハイボール
斬新な見た目で人気だったメロンを使ったハイボール

例えばCNNで一昨年の大晦日に放送された年越し生番組で、司会を務めた同局の看板キャスター、アンダーソン・クーパー氏とアンディ・コーエン氏が、「Mujen(ムジェン)」というブランドの焼酎を飲んでいたことがネットで話題になりました。一見すると本格焼酎とは分からないオシャレなボトルに入った「Mujen」は、熊本県にある繊月酒造がLAのムジェン・スピリッツ社と米国市場向けに共同開発した商品だそうですが、番組をきっかけに売り上げを伸ばしたと言われています。また、LAやニューヨークのバーでも最近、日本の本格焼酎を使ったハイボールやカクテルを提供するところが出始めています。

甘くて飲みやすい焼酎ベースのカクテルも
甘くて飲みやすい焼酎ベースのカクテルも

それでもまだ一般的には無名である焼酎の魅力をより多くの現地の人たちに知ってもらおうと先日、国の行政機関であるJFOODOが主催する焼酎イベントがLAのダウンタウンで行われました。LAの有名バー10店舗が参加し、今月20日から来月19日まで焼酎を使ったスペシャルカクテルを提供するキャンペーンが行われるのに合わせて開催された体験イベントを取材してきました。

焼酎について学ぶミニセミナーの様子
焼酎について学ぶミニセミナーの様子

今回のキャンペーンに参加しているのは、LAの食や文化、エンターテインメントをカバーするガイドTime Out LAが選ぶベストバー18に選出された人気バーを含む地元で有名なバーばかり。イベントでは、そんな各バーのミクソロジストが考案したオリジナルの焼酎カクテルやハイボールが振る舞われ、バーテンダーたちによるトークセッションや焼酎に関するミニ講義、米、麦、芋の違いを知るためのテイスティングなども行われました。

同じハイボールでも各バーによって全く異なるテイストに
同じハイボールでも各バーによって全く異なるテイストに

日本ではロックや水・お湯割り、チューハイなどが一般的ですが、焼酎文化に馴染のないアメリカで焼酎を広めるため、まずは同じ蒸留酒であるウオッカやジンのようにカクテルの素材として試してもらおうという販路拡大戦略が取られています。今回のイベントでは、くろうま(神楽酒蔵)、赤霧島と黒霧島(霧島酒造)、一刻者(宝酒造)、青鹿毛(柳田酒造合名会社)、謹醸しろ(高橋酒造)、黒麹 旭萬年(渡邊酒造場)に加え、アメリカなど海外限定で販売されているiichiko彩天や南海という9種類の焼酎をベースに、フルーツやソーダ、シロップ、リキュールなどを使ったハイボールとカクテルが提供されました。焼酎を飲むのは初めてという参加者もいましたが、見た目も美しいカクテルを写真に収めながら飲み比べを楽しんでいました。

9種類の焼酎を使ったキャンペーンが1カ月間にわたって開催
9種類の焼酎を使ったキャンペーンが1カ月間にわたって開催

レモンやライムなどの柑橘類やメロンを使った大胆なハイボールなどユニークな焼酎ドリンクは、どれもこれまで味わったことのないテイストで、アメリカらしさを感じさせるものばかり。「アルコール度が高そう」「芋や米、麦など種類が多くて複雑」と話していた参加者たちにも、焼酎ってこんな風に楽しめるのだと知ってもらえる機会になったように思います。そして、日本人である筆者にとってもまったく新しいShochuの楽しみ方を知り、改めてその魅力を再発見する機会になりました。

(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」、写真も)