ロサンゼルス(LA)では最近、バーで焼酎カクテルが提供されるなどじわじわと焼酎を楽しむ人が増えていますが、その背景に焼酎に関する法律改正があります。

カリフォルニア州では、ビールやワインと同じ免許で販売できるのは韓国の伝統的な蒸留酒「Soju(ソジュ)」と表示されたものに限られていたアルコール飲料に関する法律が、昨年10月に改正され、アルコール度数24度以下の本格焼酎を「Shochu(焼酎)」の名前で販売することが初めて可能になりました。

ラベルに小さくSOJUの文字が入った焼酎ボトル
ラベルに小さくSOJUの文字が入った焼酎ボトル

これまでソジュと混同されていたため、なかなか広まらなかった焼酎が、日本の蒸留酒として公認されたことに、業界からは大きな期待が寄せられています。

この法律改正を受け、日本酒造組合中央会(JSS)が21日にハリウッドのジャパンハウスで記念祝賀イベントを開催。23の蔵元が参加し、現地のレストラン関係者やバーテンダー、日系企業やトレード・小売関係者、メディアらを招待して、焼酎の試飲会並びにセミナーが行われました。

会場では80種類以上の焼酎が紹介され、参加者たちは各蔵のブースでストレートやロックで試飲を楽しんだほか、4種類の焼酎を使ったカクテル4種も振舞われ、さまざまな飲み方を体験。セミナーでは、焼酎の特徴や地域性、種類などが紹介され、ウイスキーなど他の蒸留酒と同じように楽しむための基礎知識の講義に熱心に聞き入っていました。

焼酎に興味を持つアメリカ人が増えている
焼酎に興味を持つアメリカ人が増えている

イベントでは、アメリカ未上陸のブランドからすでにLAの日本食マーケットやレストランで販売されているおなじみの銘柄まで多種多様な焼酎が紹介され、参加者たちはグラスを片手に飲み比べしながら、焼酎の魅力を存分に楽しみました。

2022年のニューヨーク州での規制緩和に続いて今回の法律改正にもロビイストのジョン・マッカーシー氏と共に尽力したJSS米国リエゾンオフィサー市原千賀子さんは、「焼酎は20年以上も間違った名前のまま販売されており、マーケットが混同していました。ニューヨークで最初に法律を変え、焼酎が日本の国酒であることを認めてもらった上で、カリフォルニアにこのケースを持ち込みました。同じ商品に”ソジュ”と”焼酎”の2つのラベルがあることは混乱しますから、カリフォルニアでも認められてクリアになりました」とコメント。一方、「絶対に法律は変えられない」「99%無理」と言われてきたことを明かし、法案に署名したアル・ムラツチ議員やミゲル・サンティアゴ議員らに感謝の意を表しました。

ハリウッドのジャパンハウスで焼酎法改正を祝したイベントが盛大に行われた
ハリウッドのジャパンハウスで焼酎法改正を祝したイベントが盛大に行われた

フランスの日本酒・焼酎コンクールで最高賞を受賞した麦焼酎「青鹿毛」を紹介した柳田酒造合名会社五代目代表の柳田正氏は、「法律を変えるのはとても難しく、100年かかると先輩から言われていましたので、それを覚悟でいつか100年後、後継者がアメリカで焼酎を広げるために、今のうちにハードリカーの世界でカクテルとしての焼酎を広げていけたらと思ってやってきました」とコメント。地元九州では食中酒である焼酎が、法改正によってやっと飲食店での提供が可能となったことで、「アメリカの方々にも食中酒として楽しんでもらいたい」と話し、「1日も早く焼酎が世界のスピリッツと同じ土俵に立てるよう押し上げていきたい」と抱負を語っています。

青鹿毛をPRする柳田酒造合名会社代表柳田氏
青鹿毛をPRする柳田酒造合名会社代表柳田氏
DAIYAMEを売り込む濱田酒造の下尾埼氏
DAIYAMEを売り込む濱田酒造の下尾埼氏

また、アメリカのバーで人気が出ている芋焼酎「だいやめ~DAIYAME~」を販売する濱田酒造の企画促進課係長下尾埼一仁氏は、「プロの方からソジュと焼酎はどう違うのかと質問を受けてきましたので、混同しない形にこれからなっていくと期待しています。2018年に創業150周年を迎えたことを機に販売したDAIYAMEは、鹿児島の方言で疲れを癒やすみたいな意味があります。明日の活力に向けて、また頑張っていきましょうという意味を込めた商品です。そうしたバックグラウンドやサツマイモからできているのにライチの香りがすることなどが、アメリカの方の心に響いているようです。150年を機に輸出に力を入れ、アメリカ全土に広げるための国際戦略を立てる中で、DAIYAMEは海外で人気が出るだろうと当初から思っていました。鹿児島で培われた食文化を世代や国境を越えて伝えていきたいという思いが込められた焼酎なので、しっかりそこは伝えていけたらと思っています」とコメント。インバウンドの追い風も受けながらシームレスな広がりを感じていると手ごたえを語っています。

昼と夜の2部制でセミナーには大勢の人が参加
昼と夜の2部制でセミナーには大勢の人が参加

ほかにも奄美大島でしか製造が許されていない黒糖焼酎「太古の黒うさぎ」を紹介していた弥生焼酎醸造所社長川崎洋之氏は、「ビールと日本酒と同じところに、やっと焼酎が入り込めたので、これからもっともっと輸出を増やしていきたい。芋や麦がメインというイメージがありますが、LAの方には焼酎というカテゴリーの中でいろいろバラエティーがあることを知っていただき、黒糖焼酎を手に取っておいしさを感じていただきたい」と販路拡大に期待を寄せています。

JSS常務理事の古賀明氏によると、12月には本格焼酎と泡盛が、日本酒と共にユネスコ無形文化遺産になることが期待されているといい、今後現地での注目度もさらに高まりそうです。(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」、写真も)