定期運行から、まだ1年半も経たないのに「幻の名車」となることが確定している新型特急列車が四国を走っている。高松~徳島を結ぶ高徳線の特急「うずしお」として走る2600系。せっかくなら讃岐うどんも徳島ラーメンも食べたいと懐かしい四国へ、乗り鉄旅に出かけた。

■振り子式2000系から新型に

私は96年2月から98年6月まで四国総局に勤務していた。だから四国内の鉄道事情は分かっている方だと思う。もう20年以上も前のことだが、四国内の電化区間は全く変わっておらず、路線もそのまま。大きな変化といえば、鉄道事業に大きな影響を与える高速道路網の発展だろう。

当時、高松と徳島を結ぶ高速道路はなく、同様の事情だった松山~宇和島間とともにJR四国は特急列車の運行に気合が入っていた。現在も高松~徳島間は16往復プラス下り1本もの特急が走っている。主役は世界初の振り子式気動車となったJR四国独自の2000系。平成の幕開けとともに運用されてはや30年。そろそろ新型車両をと、一昨年に登場したのが2600系(写真〈1〉)。


〈1〉一昨年12月に営業運転を開始したばかりの2600系(徳島駅)
〈1〉一昨年12月に営業運転を開始したばかりの2600系(徳島駅)

斬新なボディー、各座席への電源コンセント設置と、現代仕様に期待が集まったが、試運転の時点で「赤点」をもらってしまう。簡単に言うと、振り子式をやめたところ、高知県に向けて険しい山中を走る土讃線に向いていないことが判明。2両編成×2の4両だけで生産中止となってしまったのだ。

現在、十数億円をかけた、その2編成は高徳線で運用されている。定期運行が始まった時点で「幻の特急」となることが決まっている珍しい車両に乗らないわけにはいかないと、徳島へと足を運んだ。


〈2〉週末自由席早トクきっぷ
〈2〉週末自由席早トクきっぷ

事前に準備したのが「週末自由席早トクきっぷ」(写真〈2〉)。高松~徳島を特急自由席で利用すると片道2640円のところが、週末に限り往復2680円という超スグレモノ(ただし前日までの購入が必要)。アンパンマンの切符入れもいいね。


〈3〉多機能トイレもバリアフリー導入で充実した
〈3〉多機能トイレもバリアフリー導入で充実した

車内は充実している(写真〈3〉〈4〉〈5〉)。最近の特急列車にはムダを省くことに主眼が置かれるものが散見されるが、内装は全く逆。動き始めると音も静かで加速感もいい。検索エンジンで「2600系」と入れると予測ワードとして「失敗」が出てしまうぐらいなのだが、決してそうは思わなかった。


〈4〉各座席に電源コンセントがありPC設置も可能
〈4〉各座席に電源コンセントがありPC設置も可能
〈5〉日本語と英語の室内表示器が設けられた
〈5〉日本語と英語の室内表示器が設けられた

翌日、高松からの復路ではっきり分かる。10時10分発のうずしおを待っていると、やって来たのはキハ185系(写真〈6〉)。


〈6〉高松駅で出発を待つキハ185系特急
〈6〉高松駅で出発を待つキハ185系特急

こちらは国鉄末期の落成。分割民営化を前に経営苦戦が予想される四国、九州、北海道の3島JR向けに、国鉄のうちに車両を作って譲渡する形がいくつかあったが、そのうちのひとつ。現在は一部特急の他に普通車仕様に改造されて予讃線南部を走る。アンパンマンカーを連結した週末仕様(写真〈7〉〈8〉)。


〈7〉週末はアンパンマンカー連結。多くの家族が記念撮影をしていた
〈7〉週末はアンパンマンカー連結。多くの家族が記念撮影をしていた
〈8〉アンパンマンカーの車内
〈8〉アンパンマンカーの車内

お子様たちは大喜びだったが、いざ発車すると2600系とは、乗り心地がまるで違う。30数年にわたる技術の日進月歩を感じざるを得なかった。讃岐うどんと徳島ラーメンは年月関係なく美味だったが(写真〈9〉〈10〉)。


〈9〉高松ではもちろん讃岐うどん
〈9〉高松ではもちろん讃岐うどん
〈10〉徳島では徳島ラーメン
〈10〉徳島では徳島ラーメン

今後、外観や内装などが全く同じ2700系が投入される。乗るならお早めに。なお現行ダイヤでの2600系は下りが1、11、17、23号。上りが8、14、20、26号のはずです(乗車前にご確認を)。【高木茂久】