新幹線と在来線特急・急行を乗り継ぐと在来線の特急・急行料金と指定席料金が半額になる「乗継割引」という制度があります。こう書くと実に有益なルールだと思われる方が多いでしょうが、ほとんどの利用者が気付いていません。というのも切符を購入した時点で自動的に割り引かれているから。ただ詳しく知っておいてお得だったり、損をしない規定も含まれています。ぜひ有効活用しましょう。


乗継割引が適用された切符には必ず「乗継」の文字が入る
乗継割引が適用された切符には必ず「乗継」の文字が入る

乗継割引とは、いわば「昔のなごり」の制度です。東海道新幹線が開業した前回の東京五輪のころを考えてみてください。日本の大動脈である東京~大阪間には多くの特急・急行が走っていましたが、ほとんどが「失業」してしまいました。ただ大阪止まりではなく中国地方へと向かう特急については新大阪発や大阪発として生まれ変わることになります。

ここで問題が生じます。元来(というか基本的に今もですが)、国鉄では特急同士を乗り換える際は、それぞれ一から特急料金を徴収していましたが「新幹線のおかげで乗り換えを強いられる上に特急料金を2回も払うのか」と苦情が出ることは必至。そこで生まれたのが乗継割引です。

分かりやすい例が北陸本線の大阪~富山です。特急「サンダーバード」1本で行けたものが、北陸新幹線の金沢延伸でサンダーバードが金沢止まりになってしまったため、富山へは金沢での乗り換えが必要になり、大阪~金沢に乗継割引が適用されています。

ただ大阪駅の窓口で「富山まで」と言うと、もしかしたら「今日中ですか?」と尋ねられるかもしれませんが、乗継割引の説明なんて行われず、制度適用の特急券が出ます。自動券売機でも割り引きされた切符が自動的に発券されます。発達著しい各検索ソフトでもその料金が表示されるはず。となると記事にしなくてもいい話で終わってしまいますが、本題はここから。適用されないこともあるので、それを知らなければなりません。

まず乗継割引の条件として「切符は同時購入」があります。富山から金沢まで新幹線に乗った後で「大阪までサンダーバードに乗ります」と言ってもダメ。前もって新幹線+在来線特急をセットで買わなければ適用されません。広く流通しているエクスプレス予約を利用した場合も適用されませんから要注意です。

そして「すべての新幹線に適応されるわけではない」ということも知る必要があります(※)。東海道・山陽新幹線では「新横浜~新下関の新幹線各駅」と決められています。中には新幹線単独駅(新神戸など)や特急など来そうにない駅も含まれていますが、要は「東京、品川、小倉、博多はダメです」ということ。新幹線を東京で降り、常磐線特急「ひたち」に乗っても適用対象となりません。九州内は九州新幹線も含め、すべて適用外です。

最後に個人的にこれが最重要だと考えているのですが「新幹線→在来線と乗り継ぐ場合は、その日のうちに乗り継がなければならないが、在来線→新幹線と乗り継ぐ場合は在来線乗車の翌日に新幹線に乗っても適用される」という有効期限です。どういうことかというと、山陽新幹線経由で岡山から高知へ行く場合、往路はその日のうちに高知行きに乗らなければならないが、帰路は岡山で1泊しても大丈夫なのです。

なぜこのような規定があるかというと、これまた昔のなごりで寝台列車華やかな時代、在来線→新幹線と乗る場合は前日から寝台列車を利用して翌朝、新幹線に乗り継ぐケースがあったからです。今は寝台列車も急行もほとんど見かけませんが、切符の有効期限が1日延びるということは旅の幅も広がるということ。旅程作成の際には一考を。【高木茂久】


※東海道・山陽新幹線ではザックリした表記となっているが、他の新幹線では新青森、新潟、長岡、新函館北斗、長野、金沢と駅名が具体的に規定されている。乗継割引が適用されるには在来線と新幹線が同一駅であることが必要だが、大阪など同一でない駅も指定されている。おもしろいのは岡山で乗り継ぐ場合で、快速で1時間もかかる高松も適用対象。詳しくはJR各社のホームページで。