演歌歌手の出光仁美(37)が、千葉・富津「みや川丸」(宮川淳船長=62)で、手釣りのテンヤマダコ釣りに挑戦した。マダコ釣りは過去に餌木とテンヤで2回の経験があるが、いずれもボウズ。だがここ最近、プライベートのマダイ釣りでサオ頭獲得やアコウダイも見事釣り上げるなど、調子は上向き。初タコ獲得か? それとも、タコだけに“タコボウズ”となってしまうのか?

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富津港に射す朝日がまぶしく、すがすがしい。そんな中、1人緊張した面持ちの出光。「タコ釣りは本当に釣れていなくて…。今日ダメだったらトラウマになりそうなので、小さくてもいいので何とか1匹は釣りたいです」。そう話すと“腹が減っては戦はできぬ”といわんばかりに、朝5時からクーラーボックスをテーブル替わりにパスタをほおばった。

富津南沖のポイントは水深10メートルほど。小突き続けること約1時間。だが、何の反応もない。左手が疲れると、右手に変えて根気強く小突き続ける。しかし、特段変わった様子はない。「また今回もボウズの予感が…」。釣りでは弱音を吐かない出光の口から、そんな言葉が漏れた。

その約15分後、テンヤに違和感をもった。5秒ほど待ってから一気に合わせると「乗った!乗った!」と大興奮。だが、テンヤの針にはカエシがないため、取り込む際にバレたり、タコが船体に貼りついてバレることもある。宮川船長が即座にタモを用意。海面にタコが姿を見せた瞬間外れかけたが、タモでキャッチ。出光は掛けていたサングラスを放り出し、「ヤッタ~!ヤッタ~! 今ぬんときたんですよ。ぬんと!」と大はしゃぎ。上がったのは500グラムほど。「こんな感じだと思わなかったので半信半疑だったけど、朝のレクチャーを思い出して上げておこうと思ったら…。うれしい! こんなにうれしいとは思わなかった」と話すと、「船長さん、ありがとうございました!」と感謝を口にした。また、「最初は根掛かりを恐れてちょっと浮かし気味にしていたけど、しっかり海底を感じていないとダメなんですね」と続けた。

その約1時間後。突然、無言で合わせを入れた。海面に姿を見せた足が太い。周囲から「デカい!」の声が上がる。小柄な出光にとって、大ダコは船体吸着が最大の難所。だが、これも宮川船長が貼りつく前にタモで取り込んだ。宮川船長をして「久しぶり」という大ダコは2・6キロ。またもや大はしゃぎかと思いきや、本人は至って冷静。「最初のよりは3倍くらい重かったけど、上げてくる感覚と上がった獲物の差があって、正直引いてしまった」と笑った。乗った感覚は「記者さんから『ぬれぞうきんがぬ~と乗るような感覚』と説明されましたが、まさにそれ。乾いてはいませんでした」と冗談も飛び出した。

その後はひたすら小突き続ける忍耐の時間。「船長が『タコ釣りは最後の一投まで諦めるな』といっていたので!」と愚直に小突き続けた。やがて「ラストです」のアナウンス。「これで釣れたらかっこいいですよね」とテンヤを投入すると、違和感発生。キッチリ合わせると、これもしっかり取り込んだ。300グラムほどの小型だったが、有言実行。三度目の正直を有終の美で飾った。

この日のトップは5匹。次は3匹3人で、その1人が出光。船中最大も記録し、釣り運上昇中の片りんを見せつけた。「途中ボウズの予感もしたけど、三度目の正直で釣れてよかったです」と満面の笑みを浮かべた。

取材当日は、台風の影響で出船自体が危ぶまれた。宮川船長は「そもそも出船できそうにない予報だったけど、途中で予報が変わった。出られただけでも運がいい」とし、「今日は潮も速く、濁りも強かったので、決して好条件とはいえない状況でした。その中で2・6キロはもっていますね」。また、今年のマダコの状況について「型は小さめだけどわいている。これから暑くなっていけば、大型ももっとみられると思います」と予測した。

手釣りならではダイレクトな乗り感を体験してみませんか? 【川田和博】

 

◇宮川船長による釣り方講座は以下の通り。

▼仕掛け 渋糸にオモリ、餌のイシガニを縛り付けた船宿特製テンヤを使用。

▼基本的な釣り方 テンヤが着底したら、針先が海底についたままでオモリが5~10センチ上下するように小突く。まずはテンヤの重さを感覚で覚える。アクションは大きめがアピールとなるが、テンヤが浮いてしまうと乗りが悪くなる。

▼リズム 小突くリズムは自由だが、一定にしていれば乗ったときの違和感が分かりやすい。

▼乗り 魚釣りと違ってアタリはない。テンヤにタコが乗った重さで合わせる。違和感があったら、止めたり、浮かせたりで感触を確認。軟らかい感触ならタコの可能性が高い。硬い場合は根がかりが多いが、大ダコ、石や貝を抱えたタコの場合もある。平らな場所は10秒、根がキツいところは3~5秒ほど、小突きながら乗りを待つ。

▼アワセ 力が入るように立って、できるだけ渋糸の先を持って大きく自分の方に引く。

▼上げ方 一定のスピードで渋糸が張ったままの状態を維持して、自分のおなかの前で手繰る。テグスが見えたら、船体に吸着しないように手を前に出し、一気に引き上げる。タコが足を開いていると抵抗が大きいが、閉じると小さくなるので、姿を確認するまで上げる。

▼禁止事項 渋糸を手や指に巻かない。根掛かりなどで急に引っ張られたときにケガの元となる。

 

▼富津「みや川丸」電話0439・87・4137。受付5時30分。船宿特製貸しテンヤ&渋糸、ネット、さばき方レシピ、氷付きで9500円。※詳細は電話でご確認下さい。

■日刊スポーツ共栄会でマダコ釣りが可能な船宿▼大原「力漁丸」電話0470・62・0575▼千葉寒川「小峯丸」電話043・222・6557▼川崎「つり幸」電話044・266・3189▼鶴見「新明丸」電話090・4600・1225▼八景「太田屋」電話045・782・4657※テンヤ、餌木は船宿にご確認下さい。