医師で作家の鎌田實さん(67)が、日常生活のちょっとした工夫で健康になり、10歳若返るヒントを教えてくれます。

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 映画を見ていても、俳優の名前が出てこない、なんてことありませんか。10年前の野球のスターは名前はもちろん、細かい成績はよく覚えているのに、最近の選手になると「あれ、あれ、あの選手」なんて、やっぱり名前が出てこない。この程度のもの忘れは、誰にでもあるものだ。

 脳の重さは体重の2%にすぎない。しかしエネルギーの消費量は全体の20%を占める。脳は大量の有酸素運動をしているのだ。

 その結果、当然、脳の組織のなかに活性酸素が発生する。これが、脳細胞をさびつかせる。

 すると、何となくうつ的になり、やる気がなくなる場合がある。記憶力が悪くなるために、仕事の効率も低下することがある。

 この活性酸素の害から脳を守るためにどうしたらいいのか。血管のさびつきを取るには野菜の抗酸化物質がいいのだが、あいにく脳には血液脳関門がある。

 脳細胞に直接、到達できないような仕掛けがあるのだ。特に、多くの抗酸化物質は水溶性なので、血液脳関門を突破できない。

 そこで活躍するのが、脂溶性の抗酸化物質である。これがコエンザイムQ10とビタミンE。コエンザイムQ10は、イワシやサバなどの魚介類や肉類に豊富に含まれている。

 ビタミンEはアーモンド、ピーナツ、アボカド、アンコウの肝、イクラ、タラコなどに含まれている。

 また、サケ、カニ、桜エビなどに含まれるアスタキサンチンも脂溶性の抗酸化物質だ。

 これらは血液脳関門を突破し、脳のさびをとってくれる可能性がある。

 ◆鎌田實(かまた・みのる)1948年(昭23)6月28日、東京生まれ。東京医科歯科大医学部卒業後、長野県茅野市にある諏訪中央病院の医師になる(現在は名誉院長)。チェルノブイリ原発事故の患者支援、イラク難民支援を続け、東日本大震災後の被災地支援にも力を入れている。著書「がんばらない」など多数。