肺がん治療30年のスペシャリスト、国立がん研究センター中央病院の大江裕一郎先生(57)が、最新の肺がん治療を教えてくれます。

【新しい免疫チェックポイント阻害薬キイトルーダ】

 オプジーボに続き、第2の抗PD-1抗体であるキイトルーダが2017年2月に日本でも発売になりました。オプジーボがPD-L1の発現の有無にかかわらず非小細胞肺がんの患者さんに使用できるのに対して、キイトルーダはがん細胞にPD-L1が発現している非小細胞肺がんの患者さんに限って使用することができます。

 がん細胞にあるPD-L1とは免疫細胞に発現しているPD-1と結合する分子であり、PD-L1が強く発現している患者さんほど、オプジーボやキイトルーダが効きやすいといわれています。PD-L1の発現を調べるためには、気管支鏡などで肺がんの組織を採らなければなりません。

 オプジーボが化学療法の効かなくなった患者さんに対する2次治療以降でしか使えないのに対して、キイトルーダはPD-L1が50%以上の細胞で発現している患者さんに限っては化学療法の前に1次治療として使用することができます。キイトルーダが1次治療で使える患者さんは非小細胞肺がんの約30%といわれていますが、この患者さんに限ると化学療法で治療するよりも、最初からキイトルーダで治療した方が明らかに患者さんの寿命が長いことが示されています。

 オプジーボとキイトルーダの違いを表にまとめました。両者では使用できる患者さんの違いに加え、投与量の決め方、投与間隔が異なります。オプジーボの薬価は17年2月から、それまでの半額になりましたが、それでも年間1000万円以上かかります。体重あたりで投与量を決めるオプジーボより投与量が200ミリグラムに固定されているキイトルーダの方が、体重が重い患者さんには経済的ではあります。

 ◆PD-1、PD-L1 免疫細胞にあるPD-1という物質と、がん細胞にあるPD-L1という物質が結合すると免疫機能にブレーキがかかる。免疫機能のブレーキを解除しがん細胞への攻撃を高める抗体薬が注目されている。

 ◆大江裕一郎(おおえ・ゆういちろう)1959年(昭34)12月28日生まれ、東京都出身。57歳。東京慈恵会医科大学卒。89年から国立がんセンター病院に勤務。