<狭心症・心筋梗塞(1)>

 日本人の死亡原因の第1位は「がん」で、2015年には約37万人が亡くなりました。次いで多いのが「心疾患」で、約19万6000人。その心疾患の中で「虚血性心疾患」の「急性心筋梗塞」では約3万7000人、「その他の虚血性心疾患」で約3万4000人が命を落としています。

 心疾患の中で死亡者数が最も多い虚血性心疾患とは-。心臓は冠動脈によって血液が届けられ、元気に拍動を続けています。その冠動脈が動脈硬化や血栓(血液が血管内で塊を作ったもの)などで狭くなり、血液の流れが悪くなったり、遮断されたりすると、心臓の筋肉に血液が不足し、酸欠状態になります。これが虚血で、「胸が締め付けられるような痛み」「肩や背中の痛み」「奥歯やのどの痛み」などの症状が生じます。代表疾患は血管が狭くなった「狭心症」と、遮断された「心筋梗塞」です。

 このように症状を挙げると、狭心症でも心筋梗塞でも必ず症状がある、と人は思います。それは間違い。症状は出る人と出ない人がいるのです。

 症状が出ない人では、特に糖尿病の患者さんが挙げられます。糖尿病の3大合併症で有名な疾患の1つ「糖尿病神経障害」が進行していると、手足の神経だけではなく、心臓の痛みも感じにくくなってしまうのです。実際、ある患者さんで心電図をとるチャンスがあり、とってみると、心筋梗塞の波形があって心筋梗塞がみつかった人もいます。

 病気は何でもそうですが、症状だけを気にしていてはいけません。年に1回は、定期チェックを受けることが重要だと思います。(取材・構成=医学ジャーナリスト松井宏夫)