<不整脈(8)>

 心臓の拍動に乱れが生じる「不整脈」。その不整脈の最高峰で、すぐに電気ショックで発作を止めないと“突然死”に結びついてしまうのが「心室細動」です。“運動中の突然死”のニュースを聞かれたこともあると思います。日本では年間3万人が突然死していますが、その多くが心室細動と考えられています。

 心室細動は心臓から血液を送り出す心室の拍動が1分間に400回前後、まさにけいれん状態になるのです。つまり、血液を送り出せないので心停止状態です。こうなると血液は脳にも行かないので、数秒のうちに人は失神を起こして倒れてしまいます。すぐに電気ショックを行わないと、約5分後には脳障害が生じ、死に至ってしまいます。

 怖い心室細動ですが、どのような人が起こしやすいかは、ある程度わかっています。まず「重症の心疾患のある人」です。それは心筋症がある人だったり、心筋梗塞を発症したことのある人だったり、重症の心不全のある人などです。また、私のところを受診される患者さんで最も多い大動脈弁狭窄(きょうさく)症などのある人も、心室細動を起こしやすいのです。この他に遺伝も関係があるので、家族の中に不整脈で亡くなった人のいる方は、要注意です。

 この突然死に結びついてしまう怖い心室細動から身を守る方法-。確実な方法として行われているのは「植え込み型除細動器(ICD)」です。この治療の対象となるのは怖い心室細動を経験した患者さん、そして、心室頻拍を経験している患者さんです。心室頻拍は心拍数が1分間に150~250回くらいになり、ここから心室細動を誘発することがあります。やはり、突然死の原因となっています。ICDの詳細は次回に。(取材・構成=医学ジャーナリスト松井宏夫)