<心臓弁膜症(1)>

 心臓の疾患といえば、突然死に結びつくことや患者数の多さから、狭心症や心筋梗塞を思い描く人が多いようです。ところが、「心臓弁膜症」も患者数は約250万人、手術を受ける人が年間1万5000人と、油断できない疾患なのです。心臓の弁に問題が生じる疾患で、最悪の場合、やはり突然死に結びつくこともあります。

 その心臓弁膜症ですが、心臓にはいくつの弁があるかご存じでしょうか。実は4つの弁があります。心臓には部屋も4つあります。血液の流れで紹介しましょう。

 身体から戻ってきた静脈血は右心房に入り、そして右心室に流れます。この右心房と右心室の間に「三尖(さんせん)弁」があります。右心室から血液は肺動脈へ流れますが、ここには「肺動脈弁」があります。肺動脈を通って肺に送られた血液は肺胞でガス交換が行われ、酸素で満たされた血液は肺静脈を通って左心房に戻ります。そして、血液は左心房から左心室へ。この間に「僧帽弁」があります。左心室から血液は大動脈へ送り出され、全身へまわります。この左心室と大動脈の間にあるのが「大動脈弁」です。

 この弁に問題が生じると、血液循環がスムーズにいかなくなります。進行状況によって、「息が切れる」「動悸(どうき)がする」「呼吸が苦しい」「めまいがする」「身体がむくむ」「疲れやすい」などの症状がでてきます。

 ただ、この4つの弁の中で僧帽弁と大動脈弁が、年間の心臓弁膜症手術の約95%も占めているのです。原因疾患は「狭窄(きょうさく)症」と「閉鎖不全症」。4つの弁でそれぞれ起こるものの、手術が必要となるほどに進行するのは、その2つの弁なのです。狭窄症は弁の開きが悪くなり、閉鎖不全症は逆に弁の締まりが悪くなります。(取材・構成=医学ジャーナリスト松井宏夫)