前回の研究結果は、大量の飲酒は認知症の危険性を高めるものの、少量の飲酒は認知症を予防する可能性があるということを示していました。

 でも、ここで注意したいのは、少量のお酒ですぐに顔が赤くなる体質=フラッシャーの人たちです。このような、遺伝的にアルコールの代謝がうまくできない人の割合は、日本人には4割ぐらいいるとされています。

 この人たちが無理に飲酒しても、認知症を予防するという証拠はどこにもなく、食道がんになるリスクがなんと56倍になることも、東京大学の研究でわかっています。飲まない人はそのまま飲まず、飲む人は適量を守って、がいいでしょう。

 欧米では「日本の社会では休肝日を取ることで肝臓への悪影響が予防できるという古くからの考え方がある」というニュアンスで記載されています。つまり、半ば地域の風習や迷信のような扱いなのです。

 海外の専門家の多くは、「肝臓を休ませることがよいという科学的な根拠は薄い」と判断しています。「飲みすぎの人に注意を促すために休肝日が生まれた」、つまり単なる心理的効果、戒めとして「休肝日」といわれているのかもしれません。

 一般的には、週に2日連続の休肝日が提唱されていますが、それは体内のアルコールは48時間でほぼ100%分解されるからのようです。つまり2日の休肝日はどちらかといえばアルコール依存症の予防に効果がある、という理由からのようです。

 1週間の中に休肝日を設けても設けなくても、結局は1週間に飲むお酒の総量が肝臓へのダメージ度を決めているわけです。「休肝日をつくったんだから、その分、別の日はしっかり飲める!」と思ったら大間違いです。

 認知症やアルコール依存症になるほど大量に飲むのではなく、おいしく飲めているうちにやめておく、というのを目安にすればいいかもしれませんね。

 ◆森田豊(もりた・ゆたか)1963年(昭38)6月18日、東京都生まれ。秋田大医学部、東大大学院医学系研究科修了。米ハーバード大専任講師を歴任。現役医師として活躍すると同時に、テレビではコメンテーターのほか、「ドクターX~外科医・大門未知子~」(テレビ朝日系)など人気番組の医療監修も数多く務める。著書は「今すぐ『それ』をやめなさい!」(すばる舎)「ダイエットはオーダーメイドしなさい!」(幻冬舎)「ねぎを首に巻くと風邪が治るか?」(角川SSC新書)など。気分転換は週2回のヨガ。