食欲の秋、運動の秋、そして読書の秋。「灯火親しむべし(秋は涼しく夜が長いので、灯火の下で書物を読むに適している)」という漢詩が千数百年前からうたわれるほど、秋は読書をするのにもってこいの季節なのだ。

近頃はウェブサイトからたくさんの情報が手に入ることから、スマートフォンやPCで十分、本をまったく読まないという人も増えている。しかし、読書は情報収集だけではなく、ストレスオフ効果が期待できるというメリットもあることをご存じだろうか。

▼読書習慣がある人の中には、眠る前に読書をすることで心が落ち着いたり、スムーズに入眠したりできる、という人がいる。実際に読書の持つストレスオフ効果を検証した実験があり(※)、読書前と読書中の自律神経機能の変化を測定したところ、なんと読書中には交感神経が抑制されるという結果になった。

自律神経とは、自分の意思ではコントロールできない神経のこと。交感神経と副交感神経に分けられ、この2つはちょうど車のアクセルとブレーキのように、興奮とリラックスのバランスをとりながら体のさまざまな働きをコントロールしている。

▼読書で交感神経が抑えられるというのは、興奮にブレーキがかかり、落ち着いた気持ちになるということ。つまり読書にはストレスオフ効果があることを示唆している。

興味深いのは、読む本によってもその結果に差が出たことだ。「小説」と「ビジネス書」で比較すると、「ビジネス書」を読んだ時、読書前と比較して交感神経は73%ほどに抑えられたのに比べ、「小説」を読んだ時は65%に。「小説」が、よりリラックス効果が期待できる傾向がみられた。

なにか心が落ち着かない、という時には少しでも時間をつくって、読書をしてみるといいかもしれない。

※男女9人を対象に行った読書の癒やし効果検証調査(株式会社メディプラス研究所)による。開始30分前から心拍センサーを装着し、読書前を通常時とし、5分間のインターバルをはさみながら「小説」「ビジネス書」を10分ずつ読書。主に緊張や興奮、高揚時に働く交感神経機能を測定。参照〈https://mediplus-lab.jp/contents/detail/1580〉