赤ちゃんは、なぜあんなにいいにおいがするのか、不思議に思ったことはありませんか? カナダのモントリオール大学の研究グループがその疑問に答えています。

新生児のママ15人と子どもがいない女性15人の計30人の女性が対象。内容は赤ちゃんのにおいと、干した洗濯物のにおいを嗅いでもらって、好きな方を選んでもらい、さらに、その時の脳の動きを観察したのです。

30人全員が、「赤ちゃんのにおいが好き」と答えました。さらに、赤ちゃんのにおいを嗅いだ時の脳の状態を調べると、新生児のママグループの脳には明らかな変化が見られました。何と、ママグループが赤ちゃんのにおいを嗅いだ時には、脳内に快楽物質のドーパミンが放出されて、気分が高揚することが判明したのです。

つまり、赤ちゃんのにおいには、誰かと笑いあっている時やおいしいご飯を食べた時のように、脳を刺激し、幸せ感を得たり、やる気を起こさせる効果があったのです!

ママになりたての時は、産後で体調も芳しくなく、何もかもが初めてずくめの子育てです。夜泣きや授乳などに追われ、睡眠不足の状態が生じます。ママは肉体的・精神的に疲れ切ってしまいがちになります。

そこに、この赤ちゃんのにおいがドーパミンを出してくれることで、ママを癒やし、育児を楽しく頑張るための助けや、愛情を持って日々赤ちゃんに接するための動機になってくれるのです。

赤ちゃんにとっても、ママからのお世話がなくては生きていけないので、ママに愛してもらえるかどうかが重大問題なのかもしれませんね。ママと赤ちゃんにとって、愛着関係を築くのにも大きな役割を果たしてくれる赤ちゃんのにおいは、必要不可欠なのです。

研究に携わった学者は、この赤ちゃん特有のにおいを「ママと赤ちゃん双方の進化の産物」だと考えています。その「におい」は、ママと赤ちゃんへの、神様からの贈り物かもしれません。

◆森田豊(もりた・ゆたか)1963年(昭38)6月18日、東京都生まれ。秋田大医学部、東大大学院医学系研究科修了。米ハーバード大専任講師を歴任。現役医師として活躍すると同時に、テレビ、ラジオでコメンテーターとして出演多数。テレビ朝日系の人気ドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子~」の医療監修をドラマ立ち上げの時から務め、今年10月に新シリーズを迎える。気分転換は週2回のヨガで、15年あまり継続。インスタグラムdoctormorita、ホームページmorita.proなどで情報発信中。