本紙で前回、男性の泌尿器科の病気を説明してくれた、日本大学医学部泌尿器科学系主任教授・高橋悟氏(59)が、「女性の頻尿・尿失禁」についてお話しします。日本女性の約2500万人もが、オシッコで困った経験を持っているというデータがあります。そのうち成人女性の約400万~500万人が尿失禁を経験、また頻尿に悩んでいる人も少なくありません。それでいて受診をためらう女性が多いことに、同氏は「我慢しないで相談して!」と診察を勧めています。

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腹圧性尿失禁の治療法について見ていきましょう。比較的症状が軽い場合は、「骨盤底筋体操」という、骨盤底を引き締める体操で改善を目指します。

骨盤底筋体操は年齢を問わず、自宅で手軽にできる半面、正しい方法でしなければ効果がありません。自分では骨盤底を締めているつもりでも実際には動かせていないことがしばしばあるため、入浴の際などにチェックしてみましょう。

まず、左手をおなかに当て、右手の人さし指を膣(ちつ)の中に入れます。次に、膣や肛門の周りの筋肉をぎゅっと締めてみてください。おならや尿をがまんするときの要領です。このとき、おなかに力が入らず、膣に入れた指が締め付けられたり、吸い込まれるような感じがすればOKです。または、肛門に軽く指を当てて同じようにぎゅっと締めてみてください。肛門が締まって、引き上げられるような感じがすれば正しくできています。

ときどき骨盤底を締めるつもりで、いきんでしまう人がいますが、これは骨盤底を傷めてしまうので逆効果です。感覚がつかめない場合は、トイレで排尿しているとき途中で止めてみてください。完全には止められなくても勢いが弱くなったらOKです。

体操のやり方ですが、(1)リラックスして骨盤底を10秒ぐらいギューッと締めて(2)続いて10秒ほど緩める(3)次にもっと速くキュッと締めてパッと緩める。それぞれ10回繰り返し、これを1セットとして1日2~3セット行います。つまり、「締めては緩める」を1日40~60回やるということです。その際は骨盤底以外の筋肉を使わないようにしてください。おなかに手を当て腹筋に力が入っていないかを、確かめながら行ってください。

この体操を2~3カ月続けると、7割ぐらいの人は尿失禁を改善できますが、効果には個人差があります。骨盤底を締めることができても収縮力が弱い人は効果が出にくいですし、どんなに頑張っても収縮させられない人もいます。数カ月続けても改善が見られない場合は、別の治療法を選択したほうがいいでしょう。