北里大学北里研究所病院糖尿病センター長の山田悟氏が、「ウィズコロナ時代」のロカボ(緩やかな糖質制限)について解説します。ロカボの語源は「Low(低い) Carbohydrate(炭水化物などの糖質)」。新型コロナウイルスとの共生で新しい生活様式が求められる中、食事に気を付けながら、毎日楽しく食べて健康になりましょうと、勧めています。

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日本人はインスリンの分泌能力が欧米人に比べて低く、指標となるHOMAベータは欧米人100%に対し、日本人は健常者でも大体50%とお話ししました(正常は100%)。では欧米人は糖尿病が少ないのかというと、もちろんそんなことはありません。米疾病対策予防センター(CDC)は2015年、米国人の9%(3030万人)が糖尿病と推定しています。1000万人(8%)と推定される日本人よりやや上です。

ただ、日本人と違って、欧米人は基本的に恐ろしく太ってから糖尿病になります。そもそも日本とは肥満の定義が違い、日本はBMI(体格指数=体重キロ÷身長メートル÷身長メートル)25以上が肥満ですが、欧米は30以上です。

米国ではBMI30以上の人が3割を超えます。日本人で30以上の人など2、3%しかいないはずです。日本では肥満ですが、欧米なら過体重(太り気味)と判断されるBMI25以上の日本人は男性31・3%、女性20・6%です(米国人は男性70・9%、女性61・9%)。虎の門病院のデータでは、糖尿病を発症した日本人のBMIの平均は24・4で、欧米なら太り気味にも入らない人が糖尿病になっているのです。

米国の白人、日系人(ハワイ)、日系人(ロサンゼルス)、日本に住む日本人の糖尿病有病率を調べた研究があります。白人6・6%、日本に住む日本人9・1%に対し、ハワイの日系人は18・9%、ロサンゼルスの日系人は13・7%でした。食生活などライフスタイルが米国化すると(欧米化ではありません)、日本人はより糖尿病の危険が増してきます。

◆山田悟(やまだ・さとる)1970年(昭45)、東京生まれ。慶応大医学部卒。糖尿病専門医として多くの患者と向き合う中、カロリー制限による食事療法の限界に直面し、ロカボを提唱している。「糖質制限の真実」「カロリー制限の大罪」(ともに幻冬舎新書)など著書多数。