コロナウイルスが世界中で猛威を振るっています。私たちは感染予防で最善の注意を払いながら毎日を過ごしています。ストレス社会の今、心と体の健康状態をいかに維持するか、医療ライターのしんどうともが考えていきます。

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「心と身体の正しい休め方」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者で禅僧、精神科・心療内科医の川野泰周さんに聞く2回目。

「近年は『過労』自体が心をむしばんでいくということに注目が集まっています。産業精神保健という分野においてはとくに、『マルチタスク』な仕事との関連性が指摘されているのです」と川野さんは指摘する。

どういうことかといえば、常に多彩な情報が脳に入ってくるマルチタスクの状態は、脳はその処理をずっとしていなければならず、そこには思わぬ負荷がかかっているのだ。

「いろいろなものを同時に処理しようとすると、脳の中心部分の前後に位置する、後部帯状皮質と内側前頭前皮質のふたつで構成される、『デフォルトモードネットワーク(DMN)』が活性化されるといわれています。ちなみに、100メートルの選手なんかが記録を出す瞬間など非常に集中が研ぎ澄まされた状態では、DMNではなく、脳の外側を主体的に使っていると想定されています」

脳の血流をリアルタイムで測定できる機能的MRI(FMRI)でわかってきたことで、この「脳の真ん中」の燃費効率がすごく悪いのだという。

川野さんが続ける。「脳のエネルギーの6割以上をDMNで使ってしまうのです。そのためマルチタスクな仕事をし続けることは脳疲労が過度になり、うつや不安、過労死といったリスクが高まると考えられているのです」