世界的な感染拡大が続く新型コロナウイルス。未曽有のパンデミックに緊急事態宣言も発令され、社会のあり方が大きく変化している。他者とのコミュニケーションのあり方も大きく変化し、終息も見通せない重圧が続く。メンタルヘルスへの影響も懸念される中、「コロナうつ」との言葉も生まれた。長期化する「新たな生活様式」の中での「心」の問題とは。市ヶ谷ひもろぎクリニックの渡部芳徳理事長に聞いた。

  ◇   ◇   ◇

猛威を振るう新型コロナウイルス-。終わりが見えないだけに、多くの人が先行きの見えない不安に襲われている。それは「経済的な不安」「感染に対する不安」「将来の失業への不安」などが代表的と言っていいでしょう。

ここでポイントとなるのは-“不安”。「コロナうつ」とは、「この先どうなるのだろう」と不安を感じるところから始まっています。

その点、会社経営者は不安になれているので、常に逃げ道を考えています。だから、このようなケースにも強い。しかし、小規模事業の経営者は、2カ月、3カ月事業所を閉じていたのでは事業は回らなくなってしまいます。

このように不安を抱えた人、心配性の人は、何が何でも仕事をしようとします。それも、すごく緻密なやり方で仕事をしています。だから、コロナ禍ではなく普通のときは信用が増して、仕事が減少することは少ないのです。そして、良い状態が続くと、今度はその仕事が続くように、“信用を崩したくない”という不安から、また頑張ってしまう。

この点からわかるように、“不安”というのはある意味、生産性を上げるのです。しかし、その不安が適度であればいいのですが、それを超えて強度な不安になり過ぎると、今度は仕事ができなくなってしまうのです。これが精神疾患のひとつの「不安症」です。コロナうつの人は、うつ病になる以前に不安症のある人が多い、と私は診療経験から感じとっています。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)