世界的な感染拡大が続く新型コロナウイルス。未曽有のパンデミックに緊急事態宣言も発令され、社会のあり方が大きく変化している。他者とのコミュニケーションのあり方も大きく変化し、終息も見通せない重圧が続く。メンタルヘルスへの影響も懸念される中、「コロナうつ」との言葉も生まれた。長期化する「新たな生活様式」の中での「心」の問題とは。市ヶ谷ひもろぎクリニックの渡部芳徳理事長に聞いた。

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「コロナうつ」の背景には「不安症」あり、と考えられます。不安症の人はコロナうつになりやすいし、悪化しやすいと考えられるのです。その不安症の代表疾患が「社交不安症」。この疾患は最も若年で発症し、早いと小学校の高学年くらいから症状が出現します。

いわゆる「あがり症」--。社交場面で不安や恐怖を感じてしまう心理的症状です。顔が赤くなる、汗をかく、手が震えるなどの身体症状が目立ちます。これらは、「赤面恐怖」「発汗恐怖」「振戦恐怖」などと呼ばれています。また、人前で話すことが怖い「スピーチ恐怖」、人前で文字を書くと手が震える「書痙(しょけい)」、人と接することが怖い「対人恐怖」などがあります。

不安症状が続くと日常生活や社会活動が困難になり、人間関係を阻害します。結果、不安の対象となる場面を回避するようになります。

社交不安症の人たちの受診のきっかけは、就職や結婚、出産をして母親同士の付き合いなど、人間関係につまずいてしまった、などなど。すでに発症からかなりの年月が経過しており、無治療のまま経過すると、半数以上がうつ病を発症し、病態が長期化するのを実感しています。新型コロナによる非常事態宣言の結果、社交不安症の人はリモートワークにより、逆に人との接触機会が減り、症状が改善する人もみられます。しかし、非常事態宣言解除後はまた不安症状が悪化し、うつがひどくなる人もいます。不安とコロナうつの関係は、複雑で深いといえます。(取材=医学ジャーナリスト 松井宏夫)