日本の新型コロナの感染者数は、3月15日時点で44万8771人、死者は8632人とどんどん増えています。新型コロナ感染者のうち重症化しやすいのは、「高齢者」と「基礎疾患」のある人。基礎疾患としては、「慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(COPD)」「糖尿病」「高血圧」「慢性腎臓病」「心血管疾患」「肥満」など。だから、そのような人は重症化リスクからワクチン接種を先に受けることになっています。

この違いは男女間にもあります。昨年12月、南アフリカ・ケープタウン大などの国際研究チームが、約310万人の症例を分析して発表。それによると、男性は女性よりも重症化しやすく、さらに死亡する確率が1・39倍高かった。また、厚生労働省によると、昨年12月28日までに国内で亡くなった新型コロナ感染者の死亡率は女性が1・2%に対し、男性は1・6%と高かったのです。

この男女差には免疫システムが大きく関係していると考えられています。遺伝子や性ホルモンの影響がかかわっているのです。男性と女性では染色体に違いがあり、男性がXYに対し、女性はXXです。X染色体には免疫にかかわる遺伝子が多く、その働きがリカバーされやすいからと考えられています。

加えて、性ホルモン-。女性ホルモンのエストロゲンは免疫力をより上げるともいわれるのに対し、男性ホルモンのテストステロンは免疫力の恒常性や老化が強く現れる、といわれています。高齢になると男性は筋肉量も少なくなり、より免疫力が落ちるということ。だからこそ、コロナ禍の今、正しくメンズヘルス(男性の健康)を知ることが重要なのです。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)

◆井手久満(いで・ひさみつ) 1991年宮崎大学医学部卒業。国立がんセンター、UCLAハワードヒューズ研究所、帝京大学等を経て、20年4月から独協医科大学埼玉医療センター教授、低侵襲治療センター長。ロボット支援手術プロクター認定医、日本メンズヘルス医学会理事、日本抗加齢学会理事等。前立腺がん予防や男性ホルモンが研究テーマ。今年9月18~19日、日本メンズヘルス医学会を会長として開催する。