新型コロナ感染症で重症化しやすいのは、まずは「65歳以上の高齢者」。そのほかに考えられる因子は「高血圧」「心臓病」「喫煙」「肥満」「糖尿病」「慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(COPD)」「慢性腎臓病」などで、その中の1つとして「がん」もあります。

がんの患者さんは60代以上の高齢の方に多く、当然、がんだけではなくさまざまな基礎疾患をお持ちです。だから、コロナ禍では私どもに受診されている肺がん患者さんで、行動に変化のあった方は多少いらっしゃいました。肺がんの手術をされ、状態が落ち着いていて半年に1回受診されるような方は、ご自身の判断で通院を延期されたり、中断されたりした方はいらっしゃいました。

ただ、こういう患者さんは肺の一部が切除されてなくなっているので、万が一新型コロナに感染して肺炎を起こそうものなら重症化してしまいます。だから、予防はしっかりしていただくように確認、指導はしっかり行っていました。

ただ、がん検診については、対がん協会の調査で2020年には従来より受診者が30%も減ったことがわかっています。これでは、本来見つかるはずのがんが見つかりません。肺がんは早期に治療をするべきがんなのです。事実、肺がんは死亡者数が7万5394人でがんの中で最も死亡者が多い。死に結び付けないためにも、コロナ禍の今こそ肺がんを正しく知って、正しく対応すべきです。その肺がんについて、明日からしっかり紹介します。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)

 

◆池田徳彦(いけだ・のりひこ)主任教授 東京医科大学呼吸器外科・甲状腺外科主任教授。1960年(昭35)生まれ。86年東京医科大学卒業。93~94年カナダ・ブリティッシュコロンビア大学へ留学。2002年東京医科大学講師、05年国際医療福祉大学三田病院呼吸器外科教授を経て08年より現職。専門は呼吸器外科(肺がんの集学的治療・肺がんの早期診断)。