厚生労働省が行っている「歯科疾患実態調査」は、国民の歯や口の実態を把握する指標となっています。歯みがきの程度や虫歯の有無、年代別にどのくらい歯が残っているかなど、さまざまな調査事項があります。

1999年(平11)には「歯の寿命」が調査されており、これによると寿命がもっとも短いのは下顎の第二大臼歯(前から数えて7番めの歯)で約50年、寿命がもっとも長いのが下顎の前歯で約66年という結果でした。歯が生えてからの平均生存年数で寿命を算出しているので、10歳ごろに生えてくる第二大臼歯であれば還暦を迎える頃には失われる頻度が高いというわけです。

平均寿命から考えると、大きなギャップがあり、大半の方は入れ歯やインプラントといった代用品のお世話にならなければならないと解釈できます。

この調査から現代にいたるまでには歯科医療を取り巻く状況も大きく様変わりしています。健全な状態で歯を残すことのメリットが定着し、予防という概念を患者さんとしっかり共有できる時代になりました。どなたにでも共通してアドバイスできる内容というのは非常に限られますが、最低でも半年に1度は歯科医院に足を運ぶことをおすすめします。虫歯や歯周病といった一般的な病気だけでなく、咬耗(こうもう)や摩耗(まもう=歯のすり減り)といった歯の加齢現象にも注意が必要だからです。

かみ合わせが強い、歯ブラシを強く当てすぎるといった癖があればより進行が早まりますし、楽器やパイプを使う習慣があれば前歯の一部分が削れるなど特有の症状がみられます。負荷が積み重なると歯が欠ける、折れる、そして失われる可能性が高まります。私の場合、歯周病のリスクは低いのですが、かみ合わせによって歯に亀裂が入りやすいタイプなので3カ月に1度のチェックをお願いしています。