乳がんは早期に発見できると90%が治るがんです。早期発見の半分が検診で発見されており、残り半分は患者さん自身が乳房の異変に気づいて受診されています。

自分で乳房の異変に気付いた患者さんのうち、多いのは、お風呂に入っているときや服を着替える時に、たまたま手が乳房に触れ、「あれ、これってしこりかしら…」と気づいたケース。月経直前のタイミングで気づいた場合は、単に水がたまってできる囊胞(のうほう)というしこりであることも多いので、月経開始10日くらいに再度触って、消えていれば心配は不要です。月経終了後も同じようにしこりがある場合は、すぐに乳腺外科を受診してください。

しこりに気づいても「自分はがんにならない」「以前に良性と言われたことがあるから、今回も良性よ」などと勝手に思い込んで放置してしまう方もいますが、過信は禁物です。

その一方で、皆さんにこれはやめてほしいと思うことがあります。それは、せっかくしこりに気づいても、「人間ドック」や「自治体の乳がん検診」まで待ってしまうパターンです。基本的に人間ドックも検診も無症状の方が受けるべきもの。まったく症状などないのに「大丈夫かどうか」を診るものです。しこりに気づいたら、検診や人間ドックを待たずに、乳腺外科などのクリニックを受診すれば、保険で診察が受けられます。もちろん、しこりがすべて乳がんではありませんが、乳がんでなかったとしても診察は保険適用です。乳がんでなければ、それはそれで大きな安心を得られるのです。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)