ぼくは、亡くなる直前まで日帰り温泉やおいしいものを食べに行ける体をつくろうと呼びかけてきました。

うまく長生きをして90歳まで生きたら、この連載の第3回で書いたように、男性は2人に1人が認知症、女性は3人に2人が認知症になる確率が非常に高いということを知っておいて欲しいのです。85歳の壁をぴんぴん元気に越えて、寝たきりになったり、認知症にならないこと。そのためにどうしたらいいのかを考えてきました。

ウオーキングは明らかに、寝たきり予防や認知症予防に効果があります。ウオーキングをすれば、高血圧や糖尿病、脂質異常症など生活習慣病の予防にもなります。

<脳由来神経栄養因子の増加>

ウオーキングをすると、BDNF由来神経栄養因子が脳の中で盛んに分泌され、神経細胞の結合を増やし、思考や感情に係るドーパミンやセロトニン、ノルアドレナリンといった神経伝達物質の分泌を促し、認知能力を強化してくれます。

歩くと前頭前野が刺激され、人間らしさを守ることができます。700万年前、ぼくたちの祖先は直立2足歩行を始めました。それにより、自由になった手を使うことができ、脳がさらに大きく発達したのです。脳の進化を止めないためには、ぼくたちはほんの少し時間を見つけて、歩くことが大事なのです。

歩数よりも、前回紹介した、速歩きと遅歩きを交互にする速遅歩きをすることが大事です。

医師で作家の鎌田實氏「85歳の壁 突破への極意」/連載一覧