細菌やウイルス感染、喫煙(能動喫煙)など、予防できる可能性があるリスクが原因でがんに罹患(りかん)したことによる社会の経済的負担は1兆円を超えるといった推計が、国立がん研究センターなどの研究チームにより発表されました。日本人のがんの35・9%は予防が可能と考えられ、感染が16・6%、喫煙が15・2%、以下飲酒や高塩分食品摂取と続きます。

歯科領域において重症度が高い、すなわち患者さんの生活の質を下げる疾患の代表例が「歯周病に起因する歯の喪失」です。歯周病最大のリスク要因が喫煙であることは紛れもない事実であり、全身の健康を考える上でも口の機能を損なわないためにも、たばことの付き合い方を真剣に考えていただく必要があるなと感じます。

たばこに含まれる有害物質は特に上顎の歯を直撃することが多いため、上はすべて抜け落ちて総入れ歯、かたや下はすべて自分の歯、といった状況に陥る方も珍しくありません。上顎で急速に歯周病が進行し、歯を支える骨が溶けてしまうことで歯自体が根こそぎ抜けるわけですから、当然残った土手もすでに痩せ細っています。こうした顎の形になってしまうと、取り外し式の入れ歯の強度や安定にも限界が出てきます。

力関係で例えると、軽自動車(上顎に装着した総入れ歯)にダンプカー(下顎に残っている天然の歯)が毎回衝突しているようなもの。食事の度に外れる、入れ歯がしょっちゅう壊れるといったストレスと隣り合わせです。近年普及している新型たばこ(電子たばこや加熱式たばこ)は、従来の紙たばこよりもリスクが低いという誤解もあるようですが、それは間違いです。シーシャ(水たばこ)も同様、健康被害が懸念されています。