たばこを吸う人本人が口にする主流煙には70種類の発がん性物質や、依存性の高いニコチンが含まれていることは周知の事実です。

2016年(平28)に厚生労働省が発表した報告書によると、肺、口腔(こうくう)・咽頭、喉頭、鼻腔(びくう)・副鼻腔、食道、胃、肝、膵、ぼうこう、子宮頸部(けいぶ)のがん、循環器系疾患(虚血性心疾患、脳卒中、アテローム性動脈硬化関連疾患)、呼吸器系疾患(慢性閉塞=へいそく=性肺疾患、気管支ぜんそく、結核、特発性肺線維症)、2型糖尿病といった病気の発症に能動喫煙が関連しているかという評価において「科学的根拠は、因果関係を推定するのに十分である」と判定されています。

発生する煙に含まれる化学物質がものすごいスピードで肺に到達し、そこから血液を通じて全身の臓器に運ばれるわけですから、一本吸う度に体をむしばんでしまうリスクを肝に銘じてください。能動喫煙の影響は広く認知される一方、たばこの先から出る副流煙の影響についてはまだまだ軽視されている部分もあるかと思います。

我が国において、能動喫煙に起因する年間死亡者数は約13万人、受動喫煙では約1万5000人(肺がん、虚血性心疾患、脳卒中による死亡)と推計されているそうです。受動喫煙が口の中に与える悪影響の代表例は、成人における歯周病および歯の喪失と、小児のう蝕(虫歯)です。

神戸市で2004~10年に生まれた7万6929人のデータを解析したところ、家族内に喫煙者がいる子どもが3歳までに虫歯になる可能性は1・46倍、目の前でたばこを吸う環境下にある場合は2・14倍にも高まることが、京都大学の研究チームから報告されています。子どもたちの健全な発育のためにも、社会全体で取り組んでいかなければならない課題です。