私は外来で、次のような患者さんをよく見かけます。大腸がんを心配されて受診される方の中には、ご夫婦で来られる方が意外といらっしゃるのです。そして、その時に多いのが、便潜血検査が陽性で引っかかっているにもかかわらず、「俺は痔(じ)だから」とか「俺は痔持ちだから」と言って次の内視鏡検査を受けていない患者さんです。

そして、外来で、奥さんがご主人に「去年、内視鏡検査を受けなさい、と言ったのに!」と言って、夫婦げんかをされるのです。

そのように勝手に痔だと思い込む患者さんが多いのです。痔が原因での便潜血検査陽性かどうかは、内視鏡検査を行って初めて分かるので、勝手に思い込むのはいけません。実際、便潜血検査を受けて陽性だった人で、次の精密検査を受けた人は69%程度と報告されています。大腸がんが疑われているのに、その程度の人しか精密検査を受けていない。少なすぎます。

これが他の疾患、「肺の異常を指摘された」「乳腺の異常を指摘された」という人は、約80%が精密検査を受けているといわれています。肺がん、乳がんは次への行動が速いのに、大腸がんは次への行動が遅すぎます。

だからこそ、家族、彼、彼女に「がん検診」の受診を勧めるとともに、結果を聞いて、陽性であれば「すぐに受診しなさい!」と声をかけましょう。そのがん検診さえ受けていない人が少なくありません。大腸がんを早期に発見し、大腸がんだったとしても内視鏡治療で済むように、まずは大事な1歩を。その大腸がん検診がどのように行われるか、次回から詳しく紹介します。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)