大腸内視鏡検査で、基本6ミリ以上のポリープ(腺腫)が見つかった場合、その検査のときにポリープを切除します。

この対応に対して、医療現場では医師と患者さんがもめることが時々あります。それは、組織検査の問題です。患者さんは「どうして組織検査もしないでポリープを取ったのだ! 悪性だったのか?」と文句を言われることもあります。しかし、これは正しい対応です。

胃や食道でがんを疑った場合、必ず組織検査を行います。組織検査とは、がんと疑われる部分の組織を一部採取して、顕微鏡でがんか否かを調べる検査です。食道や胃では、がんではないポリープは基本的に内視鏡切除をすることはほとんどありません。ところが、大腸ポリープの場合は、組織検査をしなくても内視鏡でポリープを切除しても良いことになっています。10ミリのポリープ(腺腫)があった場合、がんであろうが良性であろうが組織検査をしないで内視鏡治療をします。それは、先に組織検査をして「がん」とわかっても治療方針は内視鏡治療であり、「がんでない(腺腫)」とわかっても、将来のがん化を考慮して内視鏡治療を行うことが同じだからです。それならば、最初から内視鏡切除をしてポリープ全体を組織検査にまわす方が手間も、リスクやコストも省けます。

加えて、大腸は先に組織検査をするために組織を取ると、その部分が線維化と言って“硬くなる”のです。それで、がんと分かった後に内視鏡切除しようとすると、その部分が硬くて切除しにくくなります。このことから、大腸ではポリープ切除前の組織検査は、基本的に行いません。

大腸で組織検査を治療の前に唯一行うのは、内視鏡治療ではなく、外科手術をしないといけないケース。そのケースでは、組織検査をして「組織を取った部分はがんでした。あなたの場合は外科手術になります」と説明が必要になります。そのようなケースです。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)