八海醸造/南魚沼市
第二浩和蔵の製造責任者・棚村靖製造部次長

 越後駒ケ岳、中ノ岳とともに越後三山の1つに数えられる霊峰・八海山。その麓、豪雪地帯で知られる魚沼の地に八海醸造はある。里山に抱かれた田園の中に個性的な建物が点在するのどかな風景。「魚沼の里」と呼ばれるこの地には八海醸造の酒蔵のほか、そば処(どころ)、カフェ、食堂、パン屋、菓子処、雪室など多彩な施設が集まる。近年観光スポットとしても注目されている。

 ここでひときわ目を引くのが、黒壁の威風堂々としたたたずまいの第二浩和蔵だ。ここでは主に普通酒や本醸造酒といった定番酒を製造している。大吟醸造りの技を応用し、多くの人に手頃な価格でおいしい酒を味わってほしいという蔵のコンセプトを形にすべく、最新鋭の設備を備え04年に誕生した。

 今回の一本はここで醸される「特別本醸造 八海山」。八海醸造では製造、売り上げともに8割が普通酒と特別本醸造酒。ふだん食卓に上がる酒をきちんと造ることが使命と考えている。特別本醸造酒といっても精米歩合は55%。吟醸酒並みに米を磨く。「特別本醸造酒は味が前に出てしまいがちですが、うちの特別本醸造酒は昔から、麹の香りや味を感じつつ、きれいな味わいだと言われています」と第二浩和蔵の製造責任者である棚村靖製造部次長。その理由は設備をはじめ複数あるが、棚村さんは米の大切さ、特に掛け米の品種が味に出るという。

 特別本醸造酒の掛け米は、三段仕込みの1回目にあたる添仕込みでは「ゆきの精」、最後の留仕込みでは「トドロキワセ」を使う。ゆきの精は柔らかい味わいは出せるが、すっきりと締まった味は難しく、それができるのが「トドロキワセ」なのだ。米の特性に合わせた適材適所にこだわる。10年前から実家の米作りに関わるようになった棚村さんは「肌で感じた田んぼの空気感が、酒造りで原料米を処理するときの微妙な判断に生かされています」とその意味を確認する。

 「どんな食べ物でもおいしくするのが日本酒のいいところ。その日本酒らしさが八海山らしさです」。個性に磨きをかけるため、八海醸造では昨年秋から720㍉㍑瓶を王冠キャップに変更し器としての美しさを追求。日々の食事でグラスに酒を注ぐ。何げないひとコマの幸せに、わくわく感が加わる【高橋真理子】

[2016年2月20日付 日刊スポーツ新潟版掲載]