魚沼酒造/十日町市
「アートボトル」を手にする山口勝由社長

 黄色いラベルの背景には紅白の梅が描かれ、見るからにめでたい「天神囃子(てんじんばやし)」の特別本醸造酒。蔵を代表するこの銘柄は、2009年春季全国酒類コンクールで全国1位に輝いた。辛口が多い新潟県において、異色の旨口を醸す蔵として知られる魚沼酒造。

 「昭和の頃は新潟の酒も味がありました。時代の流れでほかの蔵が辛口に移行していくなかで、うちはずっと変わらないだけ」と5代目の山口勝由社長は語る。「やはり日本酒ですから、口に含んだときにはしっかり味を感じ、後味はさっぱりして量を飲めるものがいいですね」。山口社長が言う「味のある酒」とは、まず舌の先で味を感じ、さらに舌の真ん中で〝押し味〟を感じるものだ。

 今回の1本は、先週末13万人が来場した「にいがた酒の陣」でも振る舞われた、発売したばかりの「天神囃子 純米吟醸生原酒」。契約栽培の越淡麗を50%まで磨き、芯のある味わいの中にエレガントさを感じる生原酒。日々飲む酒とは違い特別なときに、少しずつ味わいたい酒で、魚沼酒造らしさが凝縮された1本といえる。しぼりたてはこの時期限定。代表銘柄の特別本醸造酒と飲み比べるのもおすすめだ。特別本醸造酒には、「大地の芸術祭」のデザインプロジェクトの一環で制作されたアートボトルもある。

 今ではすっかり蔵の顔となった「天神囃子」の銘柄だが、元々の代表銘柄は「八幡川」だった。しかし「川は流れる」ということから祝宴の席で使ってもらうことが難しく、「天神囃子」の銘柄が生まれた。「天神囃子」は地元に伝わる祝い唄で、稲作豊穣を祈願する神事唄が起源だ。魚沼酒造のサイトから流れる「天神囃子」をBGMに、杯を傾けてみたい。【高橋真理子】

[2017年3月18日付 日刊スポーツ新潟版掲載]