強い。「SMBC日本シリーズ2020」第2戦は、ソフトバンクが投打で巨人を圧倒して連勝。18年の第3戦から続くシリーズ連勝を10に伸ばし、日本記録を更新した。長い球史でも類を見ない白星街道を、止める手だてはあるのか。短期決戦の経験が豊富な和田一浩氏(48=日刊スポーツ評論家)は、防御の徹底に風穴を開けるヒントがあると指摘した。

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「う~ん」という、うなり声しか出てこない。短期決戦はロースコアの接戦になるケースが多いが、序盤の3回までで6得点。勝負事は最後まで分からないというが、ほとんどのファンが序盤で「試合は決まった」と思ったのではないか。巨人も中盤に追い上げたが、終わってみれば13-2。確実に力量の差があった。

ソフトバンクの強さはまず、圧倒的な投手力に基づいている。先発した石川は、他のチームにいけばエースになれる存在だろう。それが第2戦の先発で、巨人先発は今村。名前を比べただけでもソフトバンク有利は間違いない。リリーフ陣を比べても圧倒している。「ある程度の得点さえできれば負けるわけがない」と思っている打者は多いだろう。こうなると焦らないで備えられ、実力以上の結果を出しやすくなる。

攻撃の軸は、やはり柳田だった。初回1死一塁からセンターオーバーの先制二塁打を打ったが、その打球はエグかった。打った瞬間センターのやや左方向に飛んだように見えたが、そこから強烈に右方向にドライブしながら背走する丸の頭上を越えていった。バットの芯で捉え、かなりのパワーがなければこのような打球にならない。特大ホームラン並みの衝撃だった。

パワーだけではない。3回先頭の第2打席では技術を見せつけた。2ストライクから内角直球がギリギリでボール。厳しいコースで、並の打者なら「気になる球」になっただろう。しかし、次の外角低めのボールゾーンのフォークボールを左前へはじき返した。「何を投げても抑えられない」と思わせる技術だった。

シリーズ前、巨人が勝つための条件に1番周東を塁に出さないことを挙げた。柳田はじめ中軸を完璧に抑えるのは難しいが、少しでも失点を少なくする絶対条件と思ったからだ。巨人投手陣も分かっているはずで、徹底マークした周東にはほとんど仕事させなかったが、ソフトバンクの中軸は予想以上の破壊力だった。

かなり実力差があるだけに、巨人が巻き返すには当初に立てた戦略の見直しが必要だろう。初戦と2戦目は同じオーダー。故障明けの亀井をDHで6番に置き、ウィーラーを左翼に据えた超攻撃型の布陣だった。しかし、ソフトバンク投手陣を相手に“打ち合い”で勝つ野球は無謀だろう。

どんな競技にも共通しているが、格上の敵に勝つためには、ガチガチに守りを固める必要がある。故障明けで守備につけない亀井を外し、DHには大城を起用。スタメン捕手に炭谷を起用してはどうだろう。

初戦、栗原に打たれた2ランも、今試合の柳田に打たれた二塁打も、打者優位のカウントで内角を狙って投げさせた球が甘くなって痛打された。バッティングカウントから内角を要求すれば、投手はストライクを欲しがって甘くなりやすい。大城は打者として一流の技量があるが、捕手として配球の基本を分かっているように思えない。それならパ・リーグ出身のベテラン炭谷を起用した方がいい。今試合も2イニングを守り自責は0。昨年も炭谷を先発起用しないで全敗しただけに起用の価値はある。

もともと今季のセ・リーグはCSがなく、実戦から離れたハンディが巨人に重くのしかかっている。今試合で送りバントをする機会はなかったが、初戦は2点を追う4回無死一、二塁から強攻策で丸に打たせ、最悪の遊ゴロ併殺。なるべく早い段階で実戦に慣れてほしい気持ちは理解できるが、送りバントでもよかった。結果論ではなく、もともと打ち勝つ野球をするには力が違うし、CSのなかったハンディもある。調子を取り戻すことを優先させるより、手堅く得点を狙っていく方が得策だった。

個人的に送りバントは大嫌い。しかし、それぐらいの戦術でいかないと、勝てる確率は上がらない。巨人の強みの1つに、ここ一番では中軸にもバントをさせる戦術がある。普段からやらない野球を推奨するつもりはないが、堂々と実践できる下地もある。攻撃野球の巨人にとって、不本意な野球になるだろうがガッチガチに守りを固め、つけいる隙をじっと待つ。それができなければ、昨年のような惨敗が繰り返される気がしてならない。(日刊スポーツ評論家)

巨人対ソフトバンク ソフトバンクが13得点で巨人に快勝した(撮影・足立雅史)
巨人対ソフトバンク ソフトバンクが13得点で巨人に快勝した(撮影・足立雅史)