先発の枚数が十分とは言えないDeNAの木曜日は先発が苦しい。だから、制球難の藤浪晋太郎投手(32)にもチャンスが回ってくるのだが、捕手目線から言えば、この試合は何もすることができない典型的な試合の入りだった。
アマチュアも含め、すべてのカテゴリーの投手に求められる最低限の役目に、2分割で投げるというものがある。外角か内角か、高めか低めか。レベルが上がれば、それが外角低め、内角高めというように4分割のピッチングになる。
藤浪は、もはや2分割でもなかった。厳しい言い方になるが、事実に即せばストライクが入るボールを探しながらのピッチングだった。ゾーンに投げられる球種を藤浪がチョイス。松尾汐恩捕手(22)のサインが異なれば首を振り、ゾーンの確率がもっとも高いボールでカウントを整える。
藤浪主体の組み立てにならざるを得ず、松尾はほぼ真ん中に甘く構えるしかない。上下左右にばらつくから、どこにそれても対応できる甘めのポジション、となる。ここでは捕手がやれることは、声をかけるか、投球を受けたら間延びしないように素早く返球し、テンポアップをアシスト、それしかない。
こういう時、捕手が陥りがちなのはピッチングにのめり込むことだ。松尾は若い。しかし、正捕手として場数も踏み、そんなことも言ってられない。藤浪に頼るしかないチーム事情では、こんな特殊状況でも、いかにして一歩退いた冷静さを保てるか。そこが特に立ち上がりには重要だ。
初回1死一、三塁でダルベックは空振り三振するのだが、そこで二盗を許す。どう見ても間に合わないタイミングで松尾はセカンドスロー。けん制もない、クイックも遅い、かつモーションも大きい。そういうことを加味して、冷静に一歩引いた視点なら、二塁送球をしない勇気、あきらめる勇気が必要だった。
結果、三塁走者佐々木は松尾のセカンドスローの間に先制ホームを奪う。重盗によるホームスチールとなるのだが、制球に苦しむ藤浪に引きずられた感は否めない。何とか藤浪を助けたかったのだろう。それは伝わった。その上での指摘だ。
残り試合でこの状況は十分にまたあり得る。相手打者と戦う以前に、ストライクを取ることに精いっぱいな投手と組む時の留意点、これもまた、捕手には必須のスペックと言える。(日刊スポーツ評論家)








