チームはセ・リーグ最下位-。

そして金本監督の退任-。

シーズン終盤で暗い話ばかりが先行しがちだが、明るい話題もある。9月23日に1軍再昇格を果たし、6日DeNA戦(甲子園)の延長10回2死満塁から一、二塁間を破るサヨナラ打を放ったニューヒーロー、島田海吏外野手(22)の台頭だ。

今季ドラフト4位で入団。50メートル5秒75の俊足を買われ、開幕1軍入りを勝ち取るも、4月8日に出場選手登録を抹消。今季の大半を2軍で過ごした。ファームはリーグ最下位の1軍と対照的に8年ぶりのウエスタン・リーグで優勝。6日に行われたファーム日本選手権では宿敵巨人を下し、12年ぶりの日本一となった。島田は2軍公式戦115試合中の101試合に出場。ルーキーながら、快進撃に大きく貢献した「矢野チルドレン」の一人だ。

矢野2軍監督が掲げた「超積極野球」。その中で象徴的なのが、ウエスタン・リーグ新記録を更新した163盗塁だ。そのうち、島田はリーグ2位でチーム最多の「26盗塁」をマークした。成功した分、盗塁死も多かった。しかし、矢野監督のアドバイスを胸に果敢にチャレンジした証しだ。

「失敗したからどうとかじゃなくて、成功も失敗も将来の自分の力にしてくれればいいと思ってどんどんいけと言っているから。一つの失敗も自分の一つの収穫にしてくれれば」

このアドバイスを矢野監督から島田は何度も言われたという。「だから僕も失敗も多いんですけど、失敗から見つけられるものはないかなっていつも考えながらできていた。恐れずにいけたところはありました」。俊足という持ち味を発揮し、アピールに成功。シーズン終盤の1軍昇格のチャンスをつかんだ。

島田は矢野監督を「気持ちをすごく大事にされる方」と説明する。

「もちろん技術も指導されるんですけど、全力疾走だったり、『負けていても、なんとかしてやろうという気持ちが(良い)結果に結びつきやすい』といつも言われる。『ダメな時にどれだけ頑張れるかとか、絶対調子が悪い時はある。そこでダメだってなるのではなくてどうにかして良い方向に持って行こうという気持ちがあれば、波も減るんじゃないか』という考え方をされています」

矢野監督の指導のもと、島田はプロ入り1年目の今年「超積極的」な取り組みで成長を遂げ、シーズン終盤に存在感を示した。チームのレベルアップに若手の底上げは必要不可欠。チームとしても来季の大逆襲へ、島田のさらなる成長と活躍に注目だ。【阪神担当 古財稜明】