真夏の夜に人知れず涙を流した。西武からFA移籍1年目の巨人炭谷銀仁朗捕手(32)は孤独と戦っていた。
シーズン終盤の8月1日広島戦で右手人さし指を骨折。離脱を強いられた。「1日でも早く。焦りはあった。チームに迷惑をかけてしまっているのもある」。1軍から離れジャイアンツ球場でリハビリ。悔しさとつらさが入り交じった。
そんな時、鮮やかに打ち上がる花火とBGMの芸術が胸に染みた。新潟の夏の風物詩、長岡花火大会を動画配信サイトで見入った。「なんで、その動画を見たかは自分でも分からない。2時間ぐらい見てた。『Jupiter』が流れている中で花火を見ていたら、涙が出てきた」。出場機会に飢えた中堅捕手の新天地での挑戦だったが、気がつけば、チームの勝利、優勝だけに視線が移っていた。出会えた奇跡が教えてくれる-。歌詞が突き刺さった。
負傷から約1カ月の3日、1軍に復帰した。大詰めのラストスパートには間に合った。勝つために、貢献するために、たたいた巨人の門。新たな仲間とともに自身“2連覇”とチームの5年ぶり頂点をもぎ取った。【為田聡史】