9月のある日のことだ。甲子園球場の右翼奥にある投手取材エリアで、阪神湯浅京己投手(23)がニヤリとしながら言った。「また痩せました?」。

確かに、記者は夏場に減量に励んでいた。よく見てるな~、と思いながら逆にこちらからも「夏場、体重落ちてないの?」と投げかけると、またニヤリ。「むしろ増えてるんですよ」。プロ4年目で1軍フル同行は初のシーズン。コンディションが気になっていたが、心配は不要だった。夏バテどころか、むしろ増量に成功していたという。

秘訣(ひけつ)は試合後の選手食堂にあるという。「いつも“坦々うどん”を食べてます。おいしいんですよ」。あまり聞き慣れない料理名だが、要するに担々麺のうどんバージョン。ピリ辛でスルスルと胃袋に入るんだとか。登板後、アドレナリンがまだ抜け切らない体にも簡単にエネルギーを入れることができる。

昨年までは2軍でデーゲームに臨むことが多かった。朝、昼、晩と規則正しい時間帯に食事をとっていたが、ナイターの多い1軍となれば話は違う。「試合の後にご飯食べるから、太ったんですよ。夜遅いから」と笑い飛ばす。

一般人にとって大敵の「深夜飯」が、プロ野球選手にとって追い風になるとは。シーズンインより2、3キロ増量した今、「それでも体は全然動きます!」と言い切る。“坦々うどん”で手に入れたベストボディーが、飛躍に一役買ったといっていい。

レギュラーシーズン最終戦となった2日のヤクルト戦(甲子園)で45ホールドポイント。中日ロドリゲスと並び最優秀中継ぎのタイトルを獲得した。いつも通り、食堂で麺をすする湯浅が目に浮かんだ。【阪神担当 中野椋】

阪神対ヤクルト 投球前に手を高く上げる阪神湯浅京己(2022年10月2日撮影)
阪神対ヤクルト 投球前に手を高く上げる阪神湯浅京己(2022年10月2日撮影)