今回の里崎チェックに取り組むにあたって、ある意味一番伝えたかったのはDeNAでした。この評論には私の熱量があるだけに、冷静に始めたいと思います。

DeNAラミレス監督(2020年6月28日撮影)
DeNAラミレス監督(2020年6月28日撮影)

まず、いくつかの誤算がありました。今永、平良の離脱、オープン戦で好調だったオースティンのケガ、抑え山崎の絶不調です。さらに、筒香が抜けた戦力ダウンへの対策という課題もありました。こうした懸案事項にラミレス監督は多彩な策を施しました。

まず4番佐野の抜てきです。開幕前の順位予想で私のDeNAは5位でした。その根拠は、筒香の抜けた戦力ダウンをどう補うのか考えた時、佐野でカバーできるのかと感じたからです。そして、現状を見てください。72試合を経過して首位打者です。ここまで結果を出すと誰が予想したでしょう。そして、今の4番佐野に疑問を投げかける人はいるでしょうか? 私はいないと思います。

山崎は1軍にそのまま残し、中継ぎ起用しました。実績のある投手の復調を目指す時、多くの場合は2軍での再調整です。それをスパッと、中継ぎに配置換えです。意外でした。それも6回、7回からの登板は、これまでの発想ではなかったのかなと、強く印象に残りました。

そして話題を呼んだ投手の8番起用法です。これも懐疑的な見方が多かったと思いますが、10日阪神戦では9番戸柱は4打数3安打1本塁打、1番梶谷も4打数2安打1打点と、つながりを見せました。確かに8番投手、9番捕手で迫力にかけた試合もありました。しかし、結果が出た試合は事実として打線は機能しています。

大切なのは結果であることは言うまでもありません。そして、結果で批判されるのもプロの世界では当然です。私はこう考えます。結果を判断材料にすることに賛同する以上、こうして結果が出た試合もフラットに評価するのがフェアだと。打線はつながり阪神戦で7点を奪いました。そして負けた。反省すべきは8失点。「8番投手」という打順を否定する結論には至らないと感じています。

今年のDeNAには巨人と比べて足りないものがあります。機動力がない(盗塁14でリーグ最下位)、犠打が少ない(29でリーグ最下位)、そして併殺打が多い(57で最多タイ)。これはデータとしても明確に出ています。客観的な根拠からしても、この3つの弱点、3弱があるからこそ、DeNA打線はチャンスをつぶしていると指摘できます。打力から受けるイメージとしてもうひとつチーム成績が伸びないのは、この3弱があるからだと言えます。

私が強く感じたことがあります。4番佐野、山崎の中継ぎ起用など、ラミレス監督の考え方は固定観念に縛られていないということです。戦力面でのマイナス要素を抱えながら、巨人に大差をつけられてはいますが、Aクラスで何とか食らいつこうとしています。これは現状打開力と言うべきラミレス監督のアイデアに起因し、そこにチームがシンクロしているからで、それゆえの成績と言えます。

プロ野球の常識にとらわれないラミレス監督の考え方に学ぶところを感じています。だからこそ、余計に攻撃面の課題にもっと正面から取り組んでもらいたいです。機動力不足という分析はできても、だからといって一朝一夕に機動力は身につきません。ならば、犠打の効果的な活用、好機をつぶす併殺打をなくすためのチーム内の規律徹底など、できることはたくさんあるはずです。

ラミレス監督の枠にとらわれない発想で、多種多様な作戦を仕掛ければ、この3弱という負のデータを、大きく好転させることが可能ではないかとさえ感じています。そして、私たち評論家も常に学ぶ姿勢が大事です。新しいこと、今までの監督がやらなかった取り組みを冷静な目で見ることです。ラミレス監督が打ち出す選手起用は非常に新鮮に映りました。

悪いことを見つけるのは簡単です。これまでの価値観に照らして違いを探せばいいのですから。でも、なぜラミレス監督はこう判断したのか、その根拠はなんだろうと、見る側もいろんな切り口から眺めてもいいと思います。そして、時にはひとつの采配を短いスパンでいい、悪いとデジタル的に区別せず、長期的に見て判断する姿勢も大事なんだと、今年のDeNAを見てつくづく考えさせられました。(つづく)

里崎智也氏
里崎智也氏

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