全国高校野球選手権は沖縄尚学の初優勝で幕を閉じた。酷暑の甲子園で球児を追いかけた担当記者が、書き残したエピソードを紹介する。

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高校野球は担当した高校の勝ち原稿を書きたくなるものだ。取材を重ねていくにつれ、その選手のこと、チームのことを知る。知れば知るほど、思い入れも強くなる。試合を見る肩にも、自然と力が入ってしまう。

8月17日。担当校の西日本短大付が3回戦で姿を消した。東洋大姫路(兵庫)から3回に2点を先制するも、結果は2-3の逆転負け。試合後、西村監督は悔し涙を流す選手を横目に、優しい口調でこう言った。

「ほんとうに素晴らしい試合をさせてもらった思いです。このチームになってから最高のゲームができたかなと思います」

悔しさをにじませながらも、どこかやり切った表情を浮かべていた。

8月17日、東洋大姫路戦でナインを出迎える西日本短大付の西村監督
8月17日、東洋大姫路戦でナインを出迎える西日本短大付の西村監督

今夏で3季連続の甲子園出場を果たした。県勢では4季連続で出場した55年夏の小倉以来、実に70年ぶりの快挙だ。今大会ベンチ入りメンバー20人中9人が昨夏からのメンバー。経験値が高く、チームとして戦い方も成熟されていた。福岡大大濠、九州国際大付など強豪がひしめき合う激戦の福岡で頭1つ抜けていた。

西村監督は予感していた。現3年生が入学してきた時だ。「『いいチームになるかもしれんね』って言っていた。個性が強かったから」と言う。

西村監督の言う「個性」とは「この子にこれをさせたら素晴らしい。この子はこれが一番とか」と選手の長所を指す。象徴的だったのは4番佐藤仁内野手(3年)だ。確実性は劣るものの、飛距離に関して全国トップクラス。今大会3試合で13打数3安打、打率2割3分1厘も、2回戦では決勝打をマーク。ここぞの勝負どころで、記憶に残る一打を放った。西村監督は普段から「空振りしただけでも相手にプレッシャーをかけられる。すごい」と主砲に声をかけていた。その意図を「そしたら思い切り振るじゃないですか。そしたら当たった時に飛ぶじゃないですか。それでいいんですよ。1本のヒットが大事なところで出てくれたら」。

8月17日、東洋大姫路戦で中前適時打を放ちベンチに向かってガッツポーズする佐藤仁
8月17日、東洋大姫路戦で中前適時打を放ちベンチに向かってガッツポーズする佐藤仁

投手陣では150キロ超えの剛腕などいない。エース中野琉碧(るい)、原綾汰(ともに3年)は最速140キロにも届かない分、緩急を駆使し、テンポ良く打ち取るスタイルを貫いた。西村監督も「丁寧に投げればいいじゃないですか。それ(制球)で一番になろうよって」。選手の長所を見極め、1人1人の個性を尊重する指導を徹底させてきた。

中学時代から名の知れたような選手もいない。所属チームで全国大会出場経験のある選手はいるが、世代を代表する「スーパー中学生」と呼ばれる選手はいなかった。「スター選手? いませんよ。中学の時に有名じゃなかった子たちばかりです」。選手のほとんどが地元出身者。関西、関東の名門に比べ、個のポテンシャルは劣る。それでも「性格的に負けず嫌いな子が多かった」。例年になく我の強い選手がそろい、小川耕平主将(3年)がそんな個性派ぞろいの集団を束ねた。指揮官は「これだけの個性を(小川主将が)1つにまとめてくれた。負けず嫌いの多い子たちが、1つになったら強いですよ」。一体感のある全員野球を最後まで体現し、3季連続で聖地2勝を手にした。

「ほんと、いいチームになってくれたよね」。自信を持って、西村監督はそう言った。【佐藤究】