中日の2年目、19年ドラフト1位・石川昂弥(19=東邦)の成長を見るため、読谷でのキャンプを取材に行ったが、すごい光景に出くわした。午前中のチームプレーの内野手連係で、石川昂は最初は三塁だったが、しばらくすると一塁に入った。

いろんな守備をするとは聞いていた。ただ、私は二塁、遊撃、三塁を予想していたので、一塁に入った段階で「もしかすると」とは感じた。その後、二塁、遊撃と内野全ポジションを守った。ノックを受けるのではなく、連係プレーの確認がテーマだったので、石川昂の動きはスムーズで違和感はなかった。

それにしてもキャンプで内野全ポジションを練習するというのは、私の現役、コーチ時代(通算42年間=1年間だけ編成担当)を含めても初めてのことだった。仁村2軍監督にフェンス越しに3~4メートル離れて話を聞いた。

仁村監督は「外野も含めて全ポジションをやらせようと思っています。まず、バッティングが良くなれば、いつでも1軍に上げて試合に出られるようにと考えています。今は1軍の投手の速い球には対応しきれない段階です。ただ、これから良くなれば、(1軍で)守備固めから途中出場でも打席が回ってくることだってあります」と、数多くのポジションを練習している意図を説明してくれた。

これは並々ならぬ育成プランだと感じた。今年の中日は投手陣の先発でまだ枚数が足りないとは感じるが、中継ぎ陣は充実しており、あとは打線がしっかり組めれば、昨年と同等もしくはそれ以上の戦いも望めると、現段階では予想している。

そこに、石川昂のパンチ力がある大型野手が加われば、楽しみなチーム構成になる。石川昂の内野手としての動きについて仁村監督は「打球へ反応する時、石川昂の体全体の動きは柔らかく、滑らかに連動できます。普通は、上半身と下半身の連動性が固くなるものですが、そういう柔らかさを見ると、石川昂は(内野の)どこのポジションもこなせる能力を秘めていると思います」と言っていた。

あとは石川昂が内外野含めて練習することを、どう受け止めているかだろう。本人の言葉を聞くことはできなかったが、少しでも1軍で試合に出るチャンスをつかむためだと前向きに考えられれば、本人にとってもチームにとっても大きなチャレンジになると感じる。バッティングは成長過程だが、打てる内野手というのは非常に魅力だ。体も大きく、若いということを加味するなら、首脳陣とすれば何としてでも頭角を現してもらいたい素材だろう。2年目の今季、飛躍へのチャンスをつかめるか注目したい。(日刊スポーツ評論家)