スタンドで応援する唐津工の副島浩史副部長(撮影・菊川光一)
スタンドで応援する唐津工の副島浩史副部長(撮影・菊川光一)

07年夏の甲子園で「がばい旋風」を巻き起こし初優勝した佐賀北の3番だった唐津工野球部・副島浩史副部長(29)が、監督としての甲子園出場を夢見て奮闘を続けている。9月18日、秋季九州高校野球佐賀大会2回戦(佐賀市立)で佐賀北と対戦。投手として日本一に貢献した久保貴大監督(29)が率いる母校との初めてとなる“がばい指導者対決”に3-8で敗戦したがあらためて「聖地」への思いを強くした。

この日は、夏同様、ベンチ入りはせずスタンドから応援した。時折「バックが盛り上げろ」と鼓舞するなど声を張り上げたが願いは届かなかった。

昨秋に就任した久保監督については「いいチームをつくっている。佐賀北は役割が徹底されていた印象で、一人一人の自覚が結果につながったと思う」とたたえた。それでも負けるつもりはない。「自分たちからやる野球をやれば夏に勝てる。ひと冬鍛え上げて、佐賀北に追いつき追い越せるようにしたい」と前を向いた。

福岡大学卒業後、地元の佐賀銀行などで働いてきた。だが野球から気持ちが離れたことはない。母校が12年夏の甲子園に出場した際、応援に出かけ「今度は指導者で甲子園の舞台に立ちたい」という思いが強まった。「久保がいたから高校野球の指導者にたずさわれた」。日頃から電話で話すという久保監督から、教員試験の勉強の仕方や面接の仕方まで教わった。4度目の挑戦で昨年の教員採用試験に合格し、今春から保健体育教論で唐津工へ。野球部の指導に関わるようになった。「自分の経験を伝え、指導者として甲子園を目指したい。佐賀県の高校野球を盛り上げていけたら」と志は熱い。

07年夏甲子園優勝時の監督だった、百崎敏克・佐賀北副部長(62)は、この日の指導者対決に感無量だった。高校での指導について「(野球部を)強くする使命はありましたが、指導者を育てることも目標の1つだった」という。そして指導者の道を選んだ久保や副島へ「佐賀北出身だなというものを1つでも残してもらい、新しい風を佐賀県の高野連に吹かせてほしい」とエールを送った。

「ノックは1時間以上やることもあります」と副島。教員試験の合格祝いにと百崎氏からもらったノックバットで鍛え続けている。佐賀北出身の教員は増加中で、次代の佐賀県高校野球を担う久保や副島はそのけん引役でもある。今夏の甲子園では公立の金足農が快進撃で準優勝した。「がばい」OBによる公立の星を担う活躍も期待される。【菊川光一】


◆佐賀北のがばい旋風VTR=2007年(平19)夏甲子園

◇1回戦 夏開幕戦で、福井商相手に馬場、久保の無失点リレーで勝利。副島が大会1号。

◇2回戦 宇治山田商と延長15回引き分け。再試合で6回に集中打で逆転勝ちした。

◇3回戦 前橋商に逆転勝ち。

◇準々決勝 帝京相手に延長13回の末、サヨナラ勝ち。延長に入り久保が2度スクイズを防いだ。

◇準決勝 長崎日大との九州決戦を制し決勝へ。

◇決勝 広陵相手に4点リードされて迎えた8回、副島の逆転満塁弾など一挙5点を奪い大逆転勝ちした。「とても」を意味する佐賀弁「がばい」から「がばい旋風」と呼ばれた。

佐賀北・副島浩史
佐賀北・副島浩史