これが東京ドームなんやなあ…と思ってしまう試合だった。

1回、坂本勇人が放った先制本塁打。8回に飛び出した北條史也、福留孝介の連続本塁打。この日、飛び出した3本のアーチ、甲子園ではおそらくどれも柵越えにはなっていないと思う。「本塁打の出やすい球場」というイメージをハッキリ示した。

東京ドームは本塁打が出やすいとされる。だから投手は常にプレッシャーがかかる。従って打者に有利な球場だ。基本的にはそう捉えている。実際、ここで行われる試合は打撃戦になることが多いイメージだ。

そこで大山悠輔の話になってしまう。「打者が有利なはずの球場」と書いたが大山はどういうわけかここで弱い。この日も4の0。今季この日まで10試合を戦い、打撃成績は40打数4安打、打率はついに1割ジャストとなった。

なんだかんだ言われながら2割6分ほどの打率をマーク。本塁打もチームトップの12本を放っている男にして、なぜ、東京ドームでここまで打てないのか。ほとんど謎とも言える。

開幕から起用され続けた4番から降格したのはちょうど1週間前だ。10日広島戦(京セラドーム大阪)で6番となった。その試合で歓喜のサヨナラ3ランを放った。そこから6番、あるいは5番を打っているが相変わらずチャンスで打席が回る。回ってしまう。

この日は1回だった。近本光司の意表を突くバント安打などでつくった2死満塁。ここで打席は6番大山に回った。ここで1本、出れば…。というか、もし出なければこの先が苦しくなる。最近の阪神を知っている虎党がそんなムードで息を詰めて見守る前で力ない遊直に終わった。

「あかんわ~」。まだ1回の攻撃が終わっただけなのにそんな空気が充満する。結果もその通りになってしまった。負けているときはそういうものだが本当にガックリしてしまう。

「なぜ東京ドームで大山が打てないのか。それはよく分かりませんけど。ボクは好きでしたけどね。言えるのはすごくリキんでるってことです。いずれにしても選手に打たせてやれないのはコーチの責任」。打撃コーチの浜中治は自分を責めながらそんな話をした。

プロ野球の聖地・東京ドームで打ち勝つときの阪神は強い。今季は18日を入れて残り3試合となった。主軸として期待されている大山の奮起を待ちたい。(敬称略)