再始動というか表現が難しいのだが19日の開幕へ向け、練習試合が始まった。そこでいきなり飛び出た新外国人ボーア、待望の1発。阪神にとってはこれ以上ない形だ。練習試合が行われていた3月の時点でボーアの打撃に首をひねっていた打撃コーチ・井上一樹の笑顔が目に浮かぶ。

今季から日刊スポーツ評論家に就任した広島前監督の緒方孝市は阪神についてこんな話をしていた。

「ボーア、サンズがそれこそバース級の働きをすれば打線が一気に変わる可能性を秘めている」

新外国人がバース級の働きをすればどこでも勝つやん…という見方もあるが、そう簡単なものでもない。外国人選手が本塁打王を取るチームが優勝するとは決まっていない。阪神にとって定まらない主砲、4番打者のポジションがしっかりすれば…という意味なのは言うまでもない。

しかし、そこで心配になるのが、いつも書くのだが、守備面のピリッとしないところだ。死球で退くことになった糸原健斗の状態は心配なのだが、もし彼が元気に試合を終え、こちらが取材に出向いていれば「また来たよ」という感じで苦笑していただろう。

2回、広島の攻撃だった。1死から進境著しい広島の5番西川龍馬の当たりは引っ掛けたボテボテの二ゴロ。回り込んで捕球しにいった糸原だったがこれをジャッグル。一塁に生かしてしまった。

先発の青柳晃洋は後続を併殺打に打ち取り、事なきを得たがこういう細かいプレーが重要になってくる。そういうところがあってこその長距離砲への期待だ。

裏事情を明かせば新型コロナウイルスの影響で、現在、こちらを含む虎番記者も通常の取材モードには入れていない。具体的に言えば球場に入れる記者数も制限されており、細かいところの取材は難しい。

従ってその部分に関する会話はできていないのだが、以前の様子から想像すれば、おそらく糸原は先に書いたような反応をしただろう。もちろん反省していることを隠して。

しつこく心配するのは開幕が無観客試合でのスタートだからだ。練習試合よりモードが上がるにしてもファンがいないという点が集中力にどう影響するか。ヤジられなくていいよ、というメンタルでは話にならない。集中して、よりいい試合をすることが例年以上に求められるシーズンだ。(敬称略)

6回表を前に交代を告げる矢野監督(撮影・上山淳一)
6回表を前に交代を告げる矢野監督(撮影・上山淳一)