勝負の3年目に向かう指揮官・矢野燿大が決断した「開幕投手・藤浪晋太郎」は今後の阪神にとって大きな意味があると思う。
プロ野球は興行だ。そして、このタイプの興行に欠かせない要素が「スターシステム」だ。1人、あるいは一部の存在を中心的に位置づけ、その魅力で興味を持たせるものだ。
スターになるには要素がいる。芸能人ならやはり見た目は重要だし、スポーツ選手なら実績、実力が求められるのは当然だ。しかしそれだけではない。説明のできないそれ以外の要素、いわゆる“華”のようなものが必要だ。高校時代から多くの人に知られ、150キロ近い変化球を投げる藤浪にはそれがある。
スターには逃れられない宿命もある。いいときはもちろん、悪いときも注目されることだ。ここ数年、制球難が課題とされていた藤浪だが、これが彼でなければ、それほど注目を集めなかったのでは。
さらに言えばNPBの選手で初めて新型コロナウイルスに感染したり、あるいは練習遅刻で2軍行きを通告されたり。こんな要素も藤浪でなければ、大きな話題にはならなかったかもしれない。その部分だけを見れば気の毒なのだが、それがスターということだ。
同時にいいときはこれ以上ないぐらい称賛され、期待される。昨年1勝の藤浪が開幕投手を務めることを疑問視する声はほとんど起こっていないと思う。別にメディアが阪神球団や矢野に忖度(そんたく)しているからではない。報道する側も含め「スターシステム」が重要視されるこの世界に関わる人間の多くが「そうあるべき」と感じているからだろう。
「大山がキャプテンをやったり、近本が選手会長をやったり、お前たちの世代で強いタイガースを」。矢野が開幕投手通達でそう伝えたと、藤浪本人が明かしていた。練習もするし、人柄もいいし、再び、プラス面で脚光を浴びる時期だろう。そして、そんな藤浪をしっかり見ていてほしいと思う男がいる。
佐藤輝明だ。この日の初甲子園でいきなり適時打を放った。簡単なことではない。間違いなく彼も大いなるスター候補だ。だからこそ藤浪の姿に刺激を受けてほしい。この2人が投打のスターとして阪神に君臨すれば、これほど頼もしいことはない。その意味においても「開幕・藤浪」は重要なのだ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)




