これはびっくり…と思ったのは1回の攻撃、熊谷敬宥がセーフティーバントを敢行した場面だ。中日の先発・柳裕也はこの処理を焦り、一塁へ生かしてしまう。記録は柳の失策で熊谷に「H」ランプは灯らなかったがいい狙いだった。
そう書くと叱られるかもしれないが1回にして、試合の行方が決まった感のある状況だったかもしれない。2死満塁から坂本誠志郎に走者一掃の3点二塁打が出た。その前に佐藤輝明が先制適時打を放っている。4点を先制。先発・村上頌樹は1回をあっさり3人で終えて、好調だ。
言い方を変えれば、熊谷の打席は試合として緊張感のない状況だったかもしれない。もちろん彼にすれば打って出てCS出場へアピールしたいところだったはず。そこで、あのバント。真意…と言うほどでもないが聞いてみたくなった。なぜ、あそこでセーフティー・バントなのか。
「(内野手の)ポジショニングを見て、ですね」。寡黙な男はそう答えた。もちろん自らの安打も狙っているのだが失策でも出塁すれば意味がある。9番に回せば次の回も1番・近本光司からだ。9番で終わらせることが重要。快打を飛ばすよりイヤらしさを見せることの方がより熊谷らしいアピールにつながる…ということかもしれない。
チーム自体も同じだ。3連敗の後、ドロー。4試合で勝ちがないのは今季にすればめずらしいことだった。CSへの調整期間と言っても負けていいという話ではない。ましてや甲子園である。指揮官・藤川球児もその辺は意識していたのかもしれない。
「あと4試合しかなかったですから、この雰囲気を大事にしながらやろうと進めた。初回からそれが素晴らしい結果になりましたね。試練があってもいいですけど」。勝てなかったことを振り返り、そんな話をした。1回にして中野拓夢に犠打を命じたのも村上の13勝をアシストするのは当然として「甲子園」を考えてのことだったよう。
大リーグでは大谷翔平が打ち、山本由伸が投げて、ドジャースが地区優勝を決めた。パ・リーグもソフトバンクの胴上げか日本ハム奇跡の逆転か、と熱い。ハッキリ言って、虎党以外、阪神への注目度は低い日だったかもしれない。それでも次に燃え上がるときまで、出番を争う選手も、チームとしても、準備は続くのである。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)




